空の暗さに黄色のような白色のような光がぽつり。
その期間が長く続く季節がやってまいりました。

その中でもある人はある人のために尽くし、
ある人はあるものを作りっています。
しかし私は何一つ変わりはございません。

何故これほどまでに変わりがないのでしょうか。
人間であらば変わるものだと、誰かがおっしゃっていました。
私は人間ではないのでしょうか。
私は人間ではないのなら、何でしょう。

私はいったい何でしょう。


っという小説を読んだ。
あなたはきっと人間だ。それが僕のもった感想だ。
人間らしいその考え方をもつのは人間だ。
自分で言っていてわけがわからなりそうなので
ここまでで思考回路をシャットダウンしておいた。


小説が
『空の暗さに黄色のような白色のような光がぽつり。
その期間が長く続く季節がやってまいりました。』
ならば今は
『空の暗さに黄色のような白色のような光がぽつり。
その期間が長く続く季節がやってまいりました。』
です。


つまり同じってこと。
しかし都会ではそんな黄色のような白色のような光より
赤や青やの人工的に作られた光が目立つ。
ちかちか光るその光の群れは一言で言えば「邪魔」。


その光のせいで星など一切見えない。
一等星でさえも見えないのではないかと疑う。


疑ったからといって空を見ることはしない。
なぜならば今は昼だから。
昼真っ盛りだから。
見上げてもあるのは照明と戯れている天井だ。
なぜなら今は室内だから。
正確に言うと病室。


小説の主人公である「私」は自分が変わらないことに悩みを抱えていた。
じゃあ僕は自分が変わっていることに悩みを抱えよう。
1日前と身体は違う。


何故違うかというと。
「何でだろうね。」
一人で呟く。個室だから問題はない。
病室の中には僕しか存在しない。
あとは生命のない機会やら家具やらだけだ。


何で僕の身体は昨日まで知ってる僕の身体と違うんだろうね。
自分でもわからない。何が起こったのか。
ただわかるのは昨日と違う。


昨日みたいに手は動かない。
昨日みたいに足は動かない。


時間がたてば直るのだが。
昨日はこの手で箸を持ち食事を取れたのに。
昨日はこの足でどこかへ出かけてたはずなのに。
今日は昨日とまるっきり違う。


そんなことを考えているとドアが開いた。
そこには白衣をきた男が立っていた。


「具合はどうですか?」
「問題ないですよ、先生。」


僕の主治医だ。
名前は川上達治。
川上先生は僕に話かけてくる。


「今の季節はなんですかね。」
「秋ですよ。」


僕は何気なく答える。
何故先生はこんな質問をしているのだろうという疑問を
少し頭に浮かべながら。


「時計を忘れてしまいました。今の時刻を教えてもらえませんか?」
「午後3時12分ですよ。」
「ありがとうございます。」
「どうしたんですか先生、珍しいですね。僕の前でそんな失態見せたことなかったのに。疲れているんじゃないですか?」


先生の失敗などあまりみたことないのに。
今日に限ってどうしたんだろう。
また疑問は一つ大きくなる。


「いやいや、年ですよ年。年のせいで名前まで忘れてしまいました。
私の名前はなんでしたっけ?」
「またまたご冗談を。先生の名前は川上達治。」
「あはは、そうでしたそうでした。ついでにあなたの名前は?」
「何を言ってるんですか。佐藤希夢ですよ。」


自分の名前を率直に述べる。
すると先生の顔は少し曇った。
何故だろう、また疑問が大きくなる。


「では診察の時間なので失礼します。お大事に。」
「はい。」


先生はそう言うと病室を出た。
何故先生があんな質問をしてきたのだろう。
きっと自分の名前だって覚えていた、僕の名前だって覚えていた。
何故だろう。疑問が頭の中を駆け巡った。
すると少し疲れたのだろうか。
そのままベットの上で寝てしまった。


**


「川上先生、本田さんの具合はどうでしたか?」


本田さん担当である看護婦が質問してくる。
今私は本田さんの病室を訪れていた。


「ああ、具合はいいそうだ。基本的な情報も覚えている。
時間の読み方や季節感も大丈夫そうだ。私の名前も覚えていた。
ただ・・・。」
「ただ・・・?」


看護婦の顔が暗くなる。
それと同時に私の気持ちも暗くなった。


「自分の名前を覚えていないんだよ。」


彼の名前は『本田菊』。
『佐藤希夢』などという名前ではない。


彼は事故のせいで自分を忘れてしまっているようだ。
一人称まで変わっていた。


「どうするんですか?」
「ゆっくり様子をみるしかないだろうな。私は全力をつくすつもりだよ。」


彼が『本田菊』になるまで。



彼がえた。





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