氷帝の図書委員には鈍感でいつもボーっとしてる3年生の先輩がいる。
名前は名字先輩。
ちなみに俺の片思いの相手だったりする。勘違いしないでほしいのは一目惚れなんかではないということだ。
本を貸し出す先輩と本を借りる俺、それだけで十分会う接点がある。学園七不思議系の本を借りるときは必ずこの人が「それ面白いですよねー34ページからが特に」と、そんな話で盛り上がったりするものだ。
そんなあるべくしてあった接点で俺はこの人に惚れてしまったわけだが、もちろんあの人の頭の中にはきっと今日の夕飯何だろうとかそんなくだらないことしか考えていないことは丸わかりだった。


「名字先輩」

「あーこんにちはー日吉くん」

「相変わらずボーっとしてますね」

「日吉くんも相変わらずキリッとしてるねー」



この間延びした感じがどこか芥川先輩を思い出させるのだが、聞いたところ先輩は芥川先輩とよく昼寝をしたりするくらい仲がいいそうだ。密かに下剋上対象だ。

いや、こんな話をしにきたのではない。
今日はこの人のことをもう少し知ろうと(嫌々鳳に背中を押されて)ここまできたのだ。手ぶらで帰ったら何を言われるかわからない。




「最近暑いから日吉くん部活大変そうだねー」

「そんなことないです」

「そうなんだ。ここはクーラーついてて涼しいよね」

「そうですね。先輩は暑いとき何か工夫したりしないんですか?」

「工夫かー…」



自然な流れで聞き出せたんじゃないか?
俺にしてはよくできた内容に称賛の言葉を投げかけてやりたい。



「そうだなー。醤油煎餅を食べるかな」

「醤油…煎餅ですか」

「うん。暑いとか関係ないけど私ね、醤油煎餅がいっちばん食べ物の中で好きなの。大好き」



大好き
その言葉が頭の中で巡る。



「俺は濡れせんのほうが好きです」

「濡れせんもいいよねー」

「俺と醤油煎餅ならどっちが好きですか?」



我ながら何を言っているのかと思った。
そんな死に急ぐような真似しなくてもいいだろう。でも、少し期待をしている自分もいて、今すぐにでも自分を殴ってやりたくなった。




「日吉くんと醤油煎餅?」




いつものようにボーっとするのではなくて、ニコニコと楽しそうに話す先輩をじっと見ていると少し考えた素ぶりをした。まさか食べられるか食べられないかで決めてないだろうなこの人。







「うーん。濡れせん以上醤油煎餅以下かな」










醤油煎餅に下剋上
醤油煎餅にあって俺にないものはなんだ。










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