12月5日、どれだけこの日が来ても敵わない相手。
たった少し年上の先輩にここまで固執していたとしても絶対に縮まることはない年齢差。あの人は笑いながら気にしなくていいのになんて言うが、どう努力しても下剋上できない壁にぶち当たる絶望の感覚・・・と言っては大袈裟だが、それなりに俺は気にしていた。
先輩は二つ上でもはや高等部に寄らなければ校内で会うことさえないが、それなりに噂は知っているつもりだ。
俺と違って明るく誰にでも打ちとけて自分のペースに持っていくあの人はしっかりしているように見えてかなり間抜けな部分があることは随分と前から知っている。
それゆえに俺と同学年のやつらはもちろん高等部の先輩なんかにも人気があった。それでも先輩と同学年のやつらのことはほとんどと言っていいほど知らない。クラスでどう思われているのか、俺と付き合っているということをどういう風に見られているのか。
普段下剋上を信条として目上の人にも進んでいく姿勢だが、あの人のこととなると少し考えすぎて沈んでいく自分に気づいてどうしようもない気持ちになることがある。
俺を迷いなく真っすぐに好いてくれている目を見るたびに思う。せめて俺が後一年でも早く生まれていれば、と。

「若くん!」

校門前で待ち合わせていた先輩が走ってくる。大きな袋を大事そうに抱えてマフラーをうざったそうに巻き直したりして急いで駆けてくる姿を見て、さっきまで考えていたことはすべて突き当たる冷たい風と共に吹き飛んでいくような気がした。
だが、そんな姿は見せられない素直になれない性格と柄でもないことを考えて内心では少し嬉しいと思いながらもあの人とは対照的にマフラーに顔を埋めて待つ。

「若くん若くん!」
「なんですか」

そっけなく言うと、楽しそうに俺の手を握ってさっきの大事そうに抱えていた袋を持たせた。

「お誕生日、おめでとう!」

先輩は満面の笑みで、まるで先輩が祝われているかのように本当に心から祝っている顔をしていた。

「ありがとう、ございます」
「あのね、若くんは頭いいしいろいろ考えちゃうこともあるかもしれないし、来年は自分の代だからって気を張ることも多いと思うけど、若くんなら、絶対に上手くいく。
心配しないで!相談とかはなんでも言って!中等部の子より、高等部にいる私に相談した方がほら、やっぱ、噂とかくだらないこととか回らないから」

そう言いきった先輩に一瞬何を言っているんだ?とも思ったが、部長業のことを言っているんだとすぐにわかった。が、しかし本当に言いたいことはそこではないと言うこともあかった。
歯切れ悪く中等部の子より、と言った先輩の顔は俺が年齢差を気にしていることを、年齢差があるからいいこともあると言いたい顔をしていた。

「名前さん」

素直に呼ぶと先輩は少し驚いた顔をして今度は本当に嬉しそうにほほ笑んだ。

「ありがとうございます」

先輩ほど真っすぐにはなれないが、きっと自分も先輩と大差ない緩んだ顔をしているんだろう。








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