『委員会?』

私には全く縁の無い単語である。なぜならこの学校全ての委員会がクラスの男女二人組で構成されるからである。いくら成績に関わるからと言っても、男子と一緒に何か出来るわけがない。しかしそんなことを知らない友達は、代わりに委員会に出て欲しいと言うのだ。それは遠回しに死ねと言っているのだろうか。

「お願いお願い!」
『嫌だよ』
「今日だけはダメなの!午前中で早退しなきゃなのよ!」
『あんたどこ行くか言ってみなさいよ!』
「愛するトキヤ様の単独ライブ!!」
『爆発しろ』

何様だかなんだか知らないけど、私に押し付けるのはやめてほしい。別にどこに行こうが勝手だが、日にちくらい確認しなさいよ全く。私は無視して自分の席に戻ろうとしたが、誰かに肩を掴まれて動けなかった。

「よぉ」
『ひぃぃぃい!耳元で囁くなぁ!!』
「知ってるか?あいつら今日の委員会出れないんだってよ」
『あいつらって…男子の方も?』
「欠席になってる」

南沢くんにくるりと黒板の方を向かされ見てみると、ほんとに欠席になっていた。うわ、委員二人が欠席とかありえない。へぇ、と返事をして再び自分の席へ戻ろうとすると、今度は服を掴まれた。(これでも気を使っているんだろう。)南沢くんに目を向けると、ニヤリと笑っていた。うわー嫌な予感。

「俺なら良いだろ?」
『…何が?』
「委員会だよ、さっき頼まれてただろ」
『良いわけないし。あと別に私引き受けてないんだけど』
「俺が引き受けておいた」
『何してんのよ!』

友達を睨むと私に向かってウィンクとピースをしていた。あの子絶対何か勘違いしてる。南沢くんは南沢くんで大変機嫌が良さそうである。なんなんだこいつら。

『南沢くんとやるくらいなら他の人とやりますよ!』
「お前男子にお願いしますも言えねぇだろ」
『うぐっ…』
「人の厚意は受け取っとくもんだぜ?」

他の人、と言いながらも私は南沢くんとしか会話したことがない。無理だ、絶対無理だ!でも南沢くんに借りを作るのも嫌だしなぁ、あわわわわ…。数分唸っていると、南沢くんは痺れを切らしたのか私の耳元で、どうする?と囁いてきた。そしてビックリした私は、勢いでやります!と言ってしまったのだ。チクショウ騙された。

「ん、わかった」
『べ、別に南沢くんだから大丈夫とかじゃないんだからね!』
「はいはい。よく出来ました」
『ひっ…!』

南沢くんが頭を軽く撫でてきたので蕁麻疹までとはいかないが、めっちゃ鳥肌立った。ちなみに今の心情はハラハラドキドキと言った状態だ。別にドキドキというのは恋をしているわけではない、面倒事に対する苛立ちと南沢くんに対する心配だ。そういえばあの人、サッカー部のくせに委員会なんか出てる暇あるのだろうか。なんだか悪いことをしてしまったかもしれない。

―――

「こっち座れよ」
『嫌。』
「どうせクラスごとにとか言われるだろ!」
『嫌なものは嫌よ!』

何について言い合っているのかと言うと、話し合いを行う時の席についてである。南沢くんの隣に座るのは勘弁いただきたい。しかも既に後輩たちなど、いろんな学年がちらほら部屋に入ってきていたのだ。恥ずかしい。恥ずかしいけど嫌なんだ。暫く言い合っていると、後ろから若干控えめな声が聞こえてきた。振り向くと男の子が立っていて、いつもなら逃げるところなのだが、なぜか異常に気になって仕方がなかったのだ。

「女子といるなんて珍しいっすね」
「うるせぇ、なんで倉間がいるんだよ」
「見てわからないんですか?委員会ですよ」
「ああそう。あと、あんまりこいつに近付くなよ」
「何でですか?」

南沢くんと話していたちっちゃい男の子は不思議そうにこちらを凝視してきた。それにしても、なんか、なんか…!

『かわ、いい…』
「「は?」」
『み、南沢くん、私ね、自分より可愛い子なら平気なの…!』
「何それ初耳」
『な、名前は…?』
「倉間典人っす」
『わ、私はミョウジナマエです…!』

さっきは南沢くんの後ろの方に隠れてたけど、倉間くんの前に出てしっかり挨拶をした。まぁ可愛いくても、流石に触れるのは無理だろう。私が触れられる男の子なんて幼なじみくらいだ。え、後付け設定が多いって?しょうがないんだよ、気まぐれなんだから。

「南沢さん、何でナマエ先輩に触れちゃいけないんすか?」
「男嫌いなんだよ」
『苦手なだけだもん』
「蕁麻疹まで出すやつが何言ってやがる。ってか倉間、名前で呼ぶんじゃねぇ」
「俺の勝手ですよ。先輩、ちょっと触ってみてもいいですか?」
『それはダメです』

再び南沢くんの後ろへ回ると倉間くんは残念そうな顔をしていた。しかし何かを思い付いたように、学ランの袖で自らの手を覆った。何をするのかと思いきや、その手で私の手に触れてきたのだ。もちろん蕁麻疹は出ない。しかし何この子ほんと可愛い。

「これなら平気なんですね」
『う、うん』
「…デレデレしてないで座るぞ」
『南沢くんの隣は嫌って言ってるじゃない』
「じゃあナマエ先輩は俺の隣で」
『是非』

やった、と言って喜ぶ倉間くんに気を緩めていたら、南沢くんにぐいっと引っ張られた。思い切り油断していたのでものの数秒だったにも関わらず、鳥肌がぞわーっと立った。倉間くんは、すげぇとなぜか感心気味だ。結局南沢くんに押し切られて隣に座ったが、何かに怒っているのかずっとそっぽを向いたままだった。

「おい、ナマエ」
『な、何?』
「お前の方がずっと可愛いよ」
『…は?』

すぐに冗談だと解釈したが、南沢くんは何かおかしい。この人ならこんなこと、涼しい顔で言ってのけそうなのに。嫌いなはずなのに、妙に南沢くんの顔が見たくなった放課後だった。


離れた席に座る
(…つもりだった、だよね。南沢くんは変だし、なぜか目を合わせてくれないし。…やっぱり倉間くんの隣座ればよかった。)



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