昨日あんなことがあったせいか、南沢くんと顔が合わせづらい。あの告白の後もいろいろお世話してもらっちゃったわけで…。お礼は何がいいかな、なんて考えてみたけど一向に浮かばなかった。とりあえず、気不味くても何でもお礼は言わなければ。そう思い、気合いを入れて家を出て学校へ向かった。

「ナマエ!」
『あ、たっくん。おはよう!』
「おはよう。もう体調は大丈夫なのか?」
『大丈夫だよー』

前に怖かったたっくんを見てからから大分経つが、これといって変わった様子はない。…きっとたっくんに南沢くんの話題はタブーなんだろう、触れちゃいけない。また今度ね、と言って別れた後、自分の下駄箱に手を掛けた。しかしそこには上履きと共に白い封筒みたいな物が入っていて、表を見てみるとハートのシールが貼ってあったのだ。何かの間違いだろうそうだろう。恐る恐る裏面も確認してみると、ミョウジナマエ様へと綺麗な字で書いてあった。ま、間違いない…お初にお目にかかりますが、所謂、ら、ラブレターと言うものでしょうか…?おおおお恐ろしい…!!どうしていいのかわからなくなりつつ、階段を駆け上がって教室に入った。運がいいことにもう南沢くんは来ていて、自分の机で本を読んでいる。よ、良かったぁ…!!

『南沢くんっ…!』
「…?、どうしたんだよ、そんなに俺に会いたかったわけ?」
『あ、会いたかったと言わざるを得ない…』
「は?」
『助けて下さい』
「いや何があった」

とりあえず南沢くんの学ラン袖を掴んで屋上へ向かった(何これ新パターン…)。南沢くんは少し(かなり)混乱してたけど、こっちも混乱しかしていない。屋上に着いたので手紙のことを相談しようとすると、急に腕を掴まれた。

『な、何?!』
「いや誘われてるのかと思って」
『違うよ!どんな勘違いしてるの!』
「だってお前から俺に触れてくるのって初めてだし」

そういえば、と何も考えずに南沢くんの袖を掴んだのを思い出した。今になって恥ずかしくなり顔に熱が集まってくる。照れ隠しに南沢くんの手を振り払うとクスクスと笑われてしまった(読まれてるんだな…)。

「で、どうした」
『へ?』
「何か用があったんだろ?」
『…!、あぁぁぁぁぁ!!!』
「?」
『こ、こここれ!どうしよう!』
「落ち着け。」

例のラブレター(仮)を南沢くんに渡すとまだ私も見ていないのに中を開いた。なんだか凄く嫌そうな顔をしているが、私には何が書いてあるのか皆目見当もつかない。すると、南沢くんが中の手紙を破り捨てそうな素振りを見せたので焦って手紙を奪い取った。

「…何すんだよ」
『それはこっちのセリフだからぁ!』
「見てたら破り捨てたくなるほど臭いセリフが書いてあったぞ」
『わ、私まだ読んでないから…』

チラッと見てみると確かにドラマや漫画で聞いたことがあるような、なんともロマンチックなセリフが書いてあった。誰だこんなラブレター書いた人。というかなんで私にこんな物…!

「つまり、そいつをシバき倒せばいいと?」
『言ってないよ!』
「え?じゃあ殴り倒せばいいわけ?」
『それも言ってない!何か今日の南沢くんバイオレンス!!』
「それくらいの代償は払ってもらわねぇと」
『物騒だよ!』

駄目だほんと話し通じない。もっと別の人に相談しようと思って扉の方へ逃げようとしたが南沢くんに首根っこを掴まれ敢え無く失敗した。いや今日の南沢くんは確実に危ないよ殺気で人殺せちゃうよ。

―――

と、いうわけで(どういう?)私は南沢くんと一緒に手紙に書いてあった裏庭にいます(南沢くん曰わく定番らしい)。そして相手は後輩だった。顔を合わせてから相手は少々戸惑っているみたいだし、南沢くんは相変わらず殺気を飛ばしている(何故)。

「あの…何で南沢先輩がいるんですか?」
「気にすんな」
「…ミョウジ先輩、この人と付き合ってるんですか?」
『………。』
「お前と話すつもりは無いらしいぜ」

それは言ってないよ。何だ南沢くんほんとに機嫌悪いな。目で助けてと訴えるとニヤリと笑った南沢くんに軽く引き寄せられた。

「ナマエと俺、付き合ってんだよ」
『!?』
「…そう、ですか」
「まぁそういうことだ。わかったら帰れ」
『(口悪っ…)』

男の子はしゅんとしてとぼとぼ歩いて行ってしまった。手紙の感じから連想してたからもっと派手な子を想像してたけど、意外と可愛い子だった。というか、いつまで南沢くんとくっ付いてなきゃいけないんだろう。大体さっきのは嘘にしても頂けない。

『わ、私南沢くんと付き合ってないよ』
「いいんだって、これから付き合うし」
『えぇ!?』
「予定だ予定」
『あれ私の意見は?』
「いやお前も俺のこと好きだろ?」

そう言われた瞬間、額に柔らかい感触がして倒れるかと思った。だって、き、キス…!蕁麻疹が出るかと思いきや、急に鼻がムズムズし出して、だぼっと鼻血が出た。南沢くんも流石に驚いたみたいで、上、上向け!と慌てた様子である。南沢くんのハンカチで押さえられて、きれいなのにもったいないなとか呑気なことを考えていた。


靴箱の脅迫状
(いやここ蕁麻疹出すところだろ。何これ意味わからん)(つまり男嫌い治ったんじゃね?)(ぎゃ!ついに私の心の声にまで侵入してきた!)(いや声に出してるし)



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