名前がかわいい。素直過ぎるところも俺のことを全く疑わないところも割りと頑固なところもかわいい…エトセトラ…。何してもかわいいとか本当に反則だろ。俺は何があっても名前を嫌いにならない自信がある。頼まれたって嫌いにならない。
先日の一件から俺は以前にも増して名前にメロメロ状態である。かわいいって言われて照れる名前はやばい。「そんなことないですよー」とか言って流されるかと思っていたから尚更だ。あんな反応されたらもっと言いたくなる。…万が一嫌われたら嫌だから、少しは我慢しよう。でもあの照れ顔は毎日拝みてぇ…!名前のかわいさに悶えて机を殴っていると「宮地うるさいぞ」前にいた木村が俺を見て引いていた。いや俺は悪くない。名前がかわい過ぎるのがいけないんだ。「俺の名前が天使過ぎるっ…」「いやお前のではないだろ…というかもう二桁は聞いた」「まだ二桁だろ」つーか多分三桁でも足りねーわ。携帯を見ながらため息を吐く。名前と一緒に昼飯食いてぇな…。学年が違うならせめて昼休みだけでも一緒に過ごしたい。でも誘えない俺だ。ヘタレか。これだからDT臭いとか言われるんだよ…言った奴シバくけど。ただ、もしも名前に言われたら興奮するのは何故か。…それは俺が気持ち悪いからだ。俺が死ね。「宮地、木村、予定表だ」大坪から部活の予定表を受け取った。わざわざクラス回ってんのか。ご苦労なこった。…ん?…クラスを回る?「…もう一年のとこ行った?」「これからだ」「よし、俺も行くわ」「なんでだよ…」そんなの名前がいるからに決まってんだろ。察しろ。
渋る大坪に無理矢理ついて行く。やっぱり一年生のフロアじゃ目立つな…だから一人で歩くの嫌なんだよ。早く名前に会いたい。大坪が高尾と緑間を呼ぶと「あれ?…なんで宮地さんも?」案の定ツッコまれた。お前もか。いやお前は分かってて言ってるだろ。「清志先輩っ」「名前…!」小走りでやってきた名前はどことなく嬉しそうだ。かわいい。ちょうかわいい。頭を撫でると嬉しそうに笑ってくれた。なんか周りに引かれてる気がするけど、まあいいか。名前を愛でている時の俺は割りと温厚だ。

「清志先輩」
「どうした?」
「先輩の為にクッキー作ったんです。嫌いじゃなかったら貰ってください」

なんだと…?一体いつそんなフラグが立ったんだ。「先輩の為に」という一言が俺の中で何度もリピートされる。名前が、俺の為に。もう泣く程嬉しい。俺の為に、俺のことだけ考えながら作ってくれたってことだろ?それを受け取らない男がいるか。ワンテンポ遅れたが礼を言って名前から紙袋を受け取った。うわあああ嬉し過ぎて手震える!そんな俺の様子に少し違和感を覚えたのか、名前は不安そうな顔をした。「クッキー嫌いでした?」「嫌いじゃない!」「ほんと?」「ほんと。嬉しい…」ただ少し、テンション上がり過ぎただけだ。甘いものは得意じゃないが嫌いな訳じゃない。というか名前が作ったものならなんでも食えると思う。…スルーしてしまったが、さっき一瞬、タメ口にならなかったか?「ほんと?」って。ダメだかわいい。それ、俺に心を開いてくれてると思っていいんだよな。無意識かもしれないが。でもかわいい。普段真面目でしっかり敬語使ってるのに、仲良くなってくるとタメ口になるとか…いい。すごくいい。「あのさ、」「はい」「今日、昼飯一緒に食っていい?」「もちろんですよ」ちゃっかり昼休みに会う約束も取り付けた。なんか高尾が笑ったり大坪が引いたりしてるけど気にしないようにしよう。今は名前と話せて機嫌がいい。もう少し一緒にいたかったが、次の授業もあるので大坪に引っ張られた。「お前、名字の前だと…」「言うな。言ってくれるな」俺のキャラじゃないことくらいとっくの昔に気付いてるわ。高尾も緑間も前からドン引きだ。でも名前がかわいいんだから仕方ないだろ。
教室に戻ると手元の紙袋をネタにからかわれたり妬まれたりした。袋の柄と色で女子に貰ったことは丸分かりだ。「このリア充が!リア充感染しろよ!!」なにそれ初めて聞いた。爆発じゃないのか。お前ら必死だな。そして俺もリア充じゃない。ガヤを無視して袋の中を見ると、ラッピングを施したクッキーとメッセージカードが入っていた。「いつも優しい清志先輩が大好きです」…ばぁぁぁぁか!俺も大好きだよ!もう付き合えよ!…でも恋愛的なニュアンスが一切漂ってないのは何故だ。やっぱり意識されてないのか…。しかしバスケットボールを象ったクッキーを見ると少なからず愛を感じる。器用だな…ハート型期待してなかったと言えば嘘になるけど。これはこれでいいか。

昼休みに体育館裏で待っていると、機嫌が良いのか、例のかわいい歩き方(通称ペンギン歩き)をした名前がやってきた。両手を少し横に出して、少しジャンプしながら歩くのだ。相変わらずかわいい。手招きをすれば傍まできて俺の隣に腰を下ろす。…なんだか見つめられている気がするのは気のせいだろうか。別に構わないけど、名前に見られるとやけに緊張する。そして無駄にカッコつける。漸く俺から視線を外して弁当を開け始めた。ああ緊張した…。視線って痛いな。なんで名前は俺に見つめられても平気なんだよ。…さっきも言ったが意識されていないからである。はぁ…鈍感攻略ツラい。そんな俺の気も知らずに名前は弁当を開けた。あ、なんだあれかわいい。彩りも形も女子っぽいというか、幼稚園児の母親が気合い入れて作る弁当に似てる。名前が食べると思うとかわいくて仕方ないんだけど。

「名前の弁当かわいいな」
「今日のはちょっと張り切っちゃっただけですよ」
「えっ、自分で作ってんの?」
「そうです」

そういえば料理好きだって言っていた。男は料理上手い女子好きだからな…俺は名前ならどんなに料理下手だろうと構わないが。というか褒められた時の照れ笑いかわいい。もう嫁に来いよ頼むから。あ、ついに付き合う段階すっ飛ばした。まあ俺は名前といちゃつければなんでもいい。毎日弁当とか作ってもらいてぇな。どうやら無意識に名前の弁当を凝視していたらしく「何か食べますか?」なんて言ってくれた。そりゃ好きな子が作った弁当とか食べたいに決まってるだろ。なんでもいいと言った俺に、箸で掴んだ卵焼きが向けられた。「先輩、あーんしてください」待て待て待て待て。俺もうお前のことよく分からない。確かに俺の昼飯はパンだし、箸は持っていない。普通の流れなのかもしれないが、そういう関係じゃない男女でこれは不味いだろ。間接キスとか…少しはしたいとか思うけど。相変わらずヘタレてる俺だ。だからDT臭いとか(以下省略)。大体お前それ、きっと高尾とか緑間相手にもやるだろ?想像しただけで気持ち悪くなるし、意識されてないのもここまでだとムカつく。「ごめん、やっぱやめとく」声に苛つきが出ていなかっただろうか。ここで嫌われたら生きていけない。名前がさして気にしていない様子で卵焼きを頬張ったので息を吐く。少し惜しい気もするが、また機会はあるだろう。名前が飲み物に口を付ける。驚いたのはそれがいちごみるくではなくミルクティーだったことだ。「あれ?名前、いちごみるく売り切れてた?」遅い時間じゃない限り滅多に売り切れない気がしたけど。

「清志先輩がくれたから、好きになっちゃったんです」

えへへと少し照れながらはにかむ名前に、思い切り撃ち抜かれた。アウト。アウトだよ。その台詞はやばいだろ…。やはり名前は悪女より質の悪い小悪魔らしい。寧ろ「全部計算でした!」とか言ってくれた方が安心するわ。好きになっちゃったってなんだよ。いっそ俺も好きになっちゃえよバカ。畜生絶対顔赤い…。顔が赤くなっているであろう俺を見て笑うから、ぐしゃぐしゃに頭を撫で回してやった。それでも笑ってるところを見ると俺の顔は相当赤いんだろう。恥ずかしい。でもまあ、名前が笑ってるならいいか。この笑顔が見られるなら俺の羞恥心なんぞ安いものである。「なんでそんなにかわいいんだよ…」思わず声に出してしまったが、今度は名前が赤くなった。ほんと、かわいいって言葉に弱いな。そんな名前がかわいくて仕方ない訳だが。


(それにしても天然小悪魔恐ろしいな)


130516
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