くるくるくるくる。
さして授業に影響しないくらいの音で、私のお腹は空腹を告げていた。席が近い人には聞こえているかもしれない。朝ごはん食べてきたのに。昼食前の授業が終わるまで、あと30分はある。お腹減ってるから眠気もないし、かといって先生の話に集中出来るはずもない。
廊下側の席なのをいいことに、とりあえず壁に寄り掛かっていた。先生が黒板に何か書いていたが、見なかったことにしておこう(ごめんね先生)。
暫く視線を泳がせていると、どこからか四つ折りにされた小さい紙が飛んできた。前や隣の席に回せということなのか、私宛に飛んできたものなのか分からない。とりあえず辺りを見回してみると、隣の席の宮地くんだけはこっちを見ていた。え、やだこわい。宮地くんといえば、友達と一緒にバスケ部の練習を覗いた時、発言がめちゃくちゃ怖かった人だ(轢く、とか刺す、とか…)。その宮地くんが、どうして私のこと見てるの…!
目も逸らせずに硬直していると、宮地くんの口が少しだけ動いた。…どうやら「読め」と言っているらしい(そして私宛かい)。おずおずと紙を開くと、「どっか痛いの?」という労りの言葉が書かれていた。え、宮地くんが心配、だと…?もう何がなんだかわからないが、それより、私お腹空いてるだけなんだよね…!
嘘をつくのも申し訳ないので「お腹減ってるだけだよ」と正直に書いて宮地くんの机に投げた。紙を開いた宮地くんが笑いを堪えてるのも分かる。ああもう、恥ずかしいな!
そうこうしている間に授業は終わり、やっとごはんが食べられる時間になった。宮地くんの方は見ないが勝ちだと思ってる。いつもお昼は購買なので席を立とうとしたが、宮地くんに呼ばれてまたしても固まってしまった。

「は、はい…?」
「手出して」
「…え?え?」
「やるよ」

宮地くんに言われるがまま差し出した手には、私がいつも食べているチョコレートが2つ乗っていた。当たり前みたいな顔で「それ好きだろ」って…いや、確かに好きだけど…(なんで宮地くんが知ってるのか知りたい)。
とりあえず「ありがとう」とお礼を言ったのだが、何故か宮地くんの視線はまだ私にあった。しかもその視線は私の目と手を行ったりきたりしている。…彼はどうやら、私がこれを食べるのを待っているらしい。いやいやいやいや。人が、食べるところを見て、何が面白いと?私は見せ物じゃないんだけど…。
それでも宮地くんが怖くて、緊張しながらチョコレートを口に運んだ。何これ、恥ずかしいな…。そんな状況なのにやっぱりそれはおいしくて、思わず口元が緩んだ。

「うまい?」
「お、おいしい、です…」

私の返答に満足してくれたようで、宮地くんは嬉しそうに笑ってくれた。その笑みは私が知っている彼からは想像も出来ないくらい可愛らしくて、恥ずかしさのあまり顔を背ける。宮地くんが怖いっていうのは言動だけだったし、かっこいいのも知ってたけど。そんな笑い方されたら、どうしていいか分からないよ…!
購買に行くタイミングを完全に失った私は、未だに笑っている宮地くんから逃れる術をしらない。


その笑顔は反則だから
(そして私は何故か毎日餌付けなう)
(何か言ったか?)
(いいえ何も…!)

(title)確かに恋だった
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