この前土井先生に言われたことを真剣に考えてみた。私が利吉さんのことを好き?周りの子にヤキモチ?…あり得ない!好きどころか最早苦手な対象と化してしまった利吉さん。どうやって好きになれというんだ。そりゃ、忍びとしての実力は尊敬してるけども!
…そもそもこんなことで悩むことが間違っているのかもしれない。もうやめよう、利吉さんのことは考えない方向で。

「やあ名前ちゃん」
「…コンニチハ」
「そんな片言にしなくても」
「最近よくいらっしゃいますね」
「少しでも早く名前ちゃんに会いたいからね」

いつも通り突然現れた利吉さんのクサい台詞に、少なからずときめいてしまった。その顔で言われたらどんな女の子でもときめくよ。
前はたまに来るだけだったのに、ここ最近は頻繁に姿を見せるようになった。山田先生や忍たまたちに会っていく時もあれば、今日みたいに私の部屋にだけ足を運ぶこともある。暇っていうわけじゃなさそうだし、仕事忙しいのに大変だなぁ…。
ちょっとくらい回数を減らしてくれたら私も気が楽だし、利吉さんの負担も少なくなると思うんだけど。

「利吉さん来る回数減らした方がいいですよ。お仕事忙しいんだし…」
「おや、心配してくれるのかい?嬉しいな」
「し、心配とかじゃなくて…!」

何を焦っているんだ私は。頭の中は冷静なはずなのに、きっと顔は真っ赤になっている。このままじゃ本当に流されちゃうじゃない、利吉さんの思うツボだってば!
上手く反論出来ないでいると、今日もまた小さな箱を手渡されてしまった。…これって利吉さんに貢がせてるのかな。とんだ悪女だよ(いつも断ってるのに!)。

「お金はもっと有意義に使いましょうよ…」
「使ってるさ」
「物じゃ私は釣れませんよ」
「じゃあ何なら釣れるんだい?」
「教えるわけないじゃないですか」

そんなことしたところで利吉さんに落ちるとは言ってないしね。最近なんて週に一度利吉さんから貰ったものの合計金額を数えることが日課になっている。…返せる金額でもないんだよね。だからってそのまま返そうとしても断られるし、処分してしまうのもなんだか申し訳ない。
今日も渋々箱を開けると、可愛らしい人形が入っていた。犬?猫?…熊?よくわかんないけど可愛い…というか、利吉さんもしかして趣味変わった?いつも身に着ける物を貰っていたし、どれも高級そうな物だった。でもこの人形は、私でも入れそうな雑貨屋さんで取り扱っている物だ。

「いいですね、これ」
「………。」
「利吉さん?」
「いや、君が贈り物を褒めてくれるなんて珍しいから」

少し照れくさそうに言った利吉さんに疑問を持ったものの、すぐにその意味が理解出来た。今までいろんな物を頂いたけど、どれも高価な物過ぎて気が引けてしまっていたのだ。お礼は言っていたが、贈り物に関しての感想はなし。素敵だとは思っていたけど、金額を考えると、どうも胃の調子がね…!

「それ、店の人に勧めてもらったんだ」
「そうなんですか」
「誰にあげるのかって聞かれてね。“まだ恋仲ではないんです”って言ったら、あまり高価じゃない方がいいって言われたんだ」

…とりあえず私もその人に感謝しておこう。「まだ恋仲ではない」の“まだ”は気にしない方がいいんだよね。なんか怖いから空気読んでおこう。
「ありがとうございます」と改めてお礼を言ったら、利吉さんはまた少しだけ顔を赤くした。なんだか今日の利吉さんは変だ。

「じゃあそろそろ行くね」
「お仕事ですか?」
「いつもより長くなりそうなんだ。暫く来られないかも」
「…利吉さん、これあげます」
「え?」

暫く来ないことには敢えてノーコメントにして、部屋に常備してある飴玉を二、三個彼の手の上に乗せた。ぽかんとしている利吉さんに手を振ってみると、そのままの体制でぎゅっと抱き締められた。
ちょ、頼むからちょっと待ってくれぇぇえ!恥ずかしいとかそういうこと以前に首が締まる!利吉さん力強過ぎだよ死ぬよ!腕の中で暴れると、急に脱力した利吉さんの頭が私の肩に乗ってきた。私久しぶりに走馬灯を見たよ。

「り、利吉さん…?」
「ありがとう、嬉しいよ」
「え?ただの飴玉ですよ?」
「あ…うん。わからなかったらいいんだ」

いやそれ良くないんじゃないかな(でもなんか怖くて聞けない)。利吉さんがとても嬉しそうなので、まあいいとしよう。


ありがとうはこっちの台詞
(相変わらずよくわからない人だなぁ)



120416
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -