自分がこんなに子供っぽいとは思わなかった。利吉さんのことが好きだと思う程、言動が酷くなっていく。まるで好きな子に意地悪してしまう子供みたいで、もう呆れるしかないのだ。
それでも利吉さんが来てくれるのが嬉しくて、心中はとても穏やかではない。これではいつか嫌われてしまう。しかし、一度告白を断った相手に交際を申し込むのはどうなのだろうか…!?考え過ぎかもしれないが、どうしても気が進まないわけで。いつも誤魔化して終わってしまう。
ああもう、私にどうしろって言うの。

「名前ちゃん」
「はい?」
「仕事はそのくらいにして、休憩にしないかい?」
「…仕方ないですね」

うわ、可愛くない。本当は仕事なんて少し前に終わっていた。最近の利吉さんは文で、三日後に学園に立ち寄るなどと日程を教えてくれる。それに合わせて仕事を詰めたり調整したり…しているのだ。
だって利吉さんが来た時仕事に追われていたらお話出来ないし、きっと邪魔しちゃいけないからって帰っちゃう。頻繁に会えるわけじゃないんだから、時間は大切にしなくちゃ。

「…名前」
「!…なんですか」
「呼んでみただけ」
「………。」
「無視はやめてよ」

無視というか、硬直である。利吉さんに呼び捨てで呼ばれた記憶はなくて、思わず思考が停止してしまったのだ。しかも、呼んでみただけって…。利吉さんはどうして私を惑わせるのだろうか。
落ち着きを取り戻そうとお茶を啜った。利吉さんが結構鈍かったのはいいとして、このままでは私の心臓がもたない。いつか死ぬ。

「で、いきなり本題なんだけど」
「はい」
「名前ちゃん何か私に言うことはないかい?」

にっこりと、満面の笑みで言うものだから、思わず固まってしまった。暫くしてその言葉の意味が理解出来た私は体温が急上昇したような感覚に陥った。この人、最初からわかってたな…!鈍感なフリしてしらばっくれて、なんて性格の悪い人なんだろう。
そうわかってしまったからには、意地でも言いたくなくなる。よくも玩具みたくからかってくれたな!もうやだこの人。

「…別にないです」
「嘘は良くないよ」
「ないですってば!」

余裕な笑みを浮かべている利吉さんに吠えるように怒鳴ってしまった。やばい、いよいよ嫌われちゃうかも…。しかし、その考えは彼によって簡単に打ち砕かれた。利吉さんは私の考えを全て見透かしているかのように笑っていたのだ。なんというか、凄いを通り越して少し怖い。
少しだけ後ろに下がるが、利吉さんは何故がどんどん近付いてくる。結局壁まで追い詰められてしまって、もう引くことが出来ない。利吉さんを怖いと思ったことなんてなかったけど、今はやっぱり怖い。

「名前ちゃんが言ってくれないなら、また私から言おうか」
「何を、…」
「好きだよ」
「っ!」

その言葉と共に、口を塞がれてしまった。突然のことに反応しきれなくて、利吉さんにされるがままだ。この行為自体を嫌だとは思わないけど、返事も聞かずにするなんて、どうかしている。…そう言いながら抵抗しない私も私だ。

「…最低です」
「そんなこと言わないでよ。両想いなんだから」
「私は好きって言ってないですよ」

そう言えば、利吉さんはきょとんとした後、何の問題もないと言いたげに笑った(利吉さんは私の前でへらへらし過ぎである)。冷めた目で睨んでも効きやしない。
それどころか、「言ってないだけで思ってはいるんだよね」なんて超前向きな発言をしてきた。いや、確かに思ってるけども、自分で言うのはどうなんですかね。


両想いってなんだっけ
(子供は二人くらい欲しいな)(話が飛躍し過ぎです)(そう?じゃあ家から決めようか)(もうやだこの人)



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