食堂で昼食を取っていると、今日も立花くんから声を掛けられた。最初に会った時は、「お前と伊作を恋仲にしてやろう」なんて言っていた立花くん。しかし今はそんな様子もなく、普通に仲良くしてくれているのだ。私が長々と喋った善法寺くんの好きなところも最後まで聞いてくれたし。
そんな立花くんが、今日は私に紙切れを差し出してきた。よく見てみると“割引券”の文字が書いてある。

「何これ?」
「町にある甘味処の割引券だ。お前にやろう」
「…ありがと」
「ただし、伊作を誘うことが条件だ」
「お返しします」
「おい。」

とっさに割引券を押し返したが、立花くんは受け取ってくれない。最初からこれが目的だったのね!というかそんなこと出来るわけないじゃない!
立花くんと言い合いをしていると、横から留三郎が割り込んできた。元はといえば君のせいだよ!

「伊作誘うのか?」
「そのつもりだ」
「ちょ…なんで立花くんが答えるの!?」
「じゃあ俺呼んできてやるよ」
「留三郎!?」

いやいやそんな気遣いはいらないよ!引き止める間もなく、留三郎は走って行ってしまった。人の話は最後まで聞きなさいって言ってるのに…!
私を宥めている立花くんに愚痴を言っていると、すぐに善法寺くんが飛んできてくれた。いや、それにしてもさ、早くない?留三郎、何か余計なこと言ってないかな…(そもそも何言って呼んだのよ)。

「名前ちゃん!話って何?」
「いや、これは立花くんが…って、立花くん!?」
「…仙蔵がどうかしたの?」
「さっきまで一緒だったのに…」

自分から種撒いておきながら逃げたよあの人!もう嫌だ立花くんなんて!元は留三郎のせいだけど!
おろおろしながら慌てていたら善法寺くんが優しい声で「落ち着いて」と言ってくれた。はうっ、天使…!とりあえず深呼吸をして気持ちを落ち着かせた。ええい、こうなったらやってやるわ。立花くんの策に乗ってあげようじゃないの!頑張れ私!
善法寺くんに割引券を差し出そうとする。しかしその寸前で、何故か私より先に善法寺くんが口を開いた。

「仙蔵と仲良いの?」
「え…?えっと、仲良いかな。五日前くらいに初めて会って…」
「そっか…」

理由はさっぱりわからないけど、善法寺くんがなんだか落ち込んだ顔をしている。どうして?私何か悪いこと言ったかな…?
気のきいたことも言えずにいると、急に善法寺くんが私の肩をがしっと掴んできた。何事かと彼の顔を見たが、その表情は真剣そのものである。な、悩み事とか、そんな類いですかね…?

「僕、名前ちゃんともっと仲良くしたいんだ」
「へ…?あ、ありがとう…」
「だからさ、その…今度の休み、一緒に出掛けない?」
「え?」

なんて急なお誘いだろう。そもそもさっきの話の流れからその話題はおかしくないだろうか。…しかし、今はそんなことどうでもいいのだ。善法寺くんからお出掛けのお誘い!こんなこと、もう二度とない幸運だろう。神様ありがとう!
その流れで立花くんに貰った甘味処の割引券も見せられて、今度の休日に出掛けることになった。一緒に行けるのは嬉しいんだけど、一日中一緒だと思うとなんだか恥ずかしいな。

「あ、何着て行こう…」

男の子と出掛けることなんてないからわからないよ…(あ、留三郎とお使いなら行ったっけな)。どうせなら出来るだけ可愛く見られたいし、雰囲気もいつもとは違うものにしたい。こういう相談するなら、やっぱり立花くんかな…!?
――それから暫く、立花くんの着せ替え人形になったことは察してください。今度からは自分で決めます。


精神不安定
(あなたのせいで一喜一憂)



120314
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