くの一教室の廊下から外を眺めえると、忍たま教室の六年生が実習を行っていた。留三郎の組かもしれないので目を凝らして見てみるけれど、こんな遠くからでは誰が誰やらわからない。
しかしそんな中で一際目立って見える忍たまを発見した。最近仲良くなった、善法寺伊作くんである。そういえば、二人は同じ組だったな。善法寺くんの隣にいるのはきっと留三郎だろう。

「名前、早くしないと遅れるよ?」
「あ、ごめん!」

善法寺くんを眺められないのは惜しいけど、次の授業があるので行かなくてはならない。いいなあ留三郎は、毎日一緒に授業受けられて。留三郎はよく見えないのに、善法寺くんはここからでも笑っているのが窺える。…やっぱり狡いな。
――そういえば、善法寺くんに一目惚れしたこと留三郎に言ってないや。彼が紹介してくれたわけだし、一応報告しておいた方がいいのかな。
考えた結果、相談くらいは乗ってくれるだろうということで、留三郎の部屋の前にやって来た。とんとんと戸を叩くと中からは善法寺くんの声が聞こえてきた。忘れてた、同室なんだよね…!

「あれ?名前ちゃん?」
「あ…善法寺くん、こんにちは」
「こんにちは。どうかしたの?」
「えっと、留三郎いるかな?」
「あー…委員会に出てると思うんだけど」

留三郎の馬鹿。せっかく相談に来たのに委員会なんて!しかも善法寺くんは部屋にいるし!どうしようかと困っていたら「中で待ってる?」と勧めてくれた。いや、でも、善法寺くんと二人きりなんてそんな…!
断ろうとするも、やはり善法寺くんの押しは強い。そんなこんなで流されてしまって、今は中でお茶を淹れてもらっていた。何か話題、何か話題は…。

「…そういえば、今日実習やってたよね!」
「うん、そうだよ。くの一教室からは遠いのに、よくわかったね」
「え…!?」

善法寺くんがいたからわかったなんて、そんな恥ずかしいこと言えない(なんか気持ち悪いし)。「と、留三郎から聞いてたの」苦し紛れかと思いきや、「そうなんだ」とあまり引っかかりもなく流してくれた。よかった、ばれてない。
暫くすると留三郎がぼろぼろになって帰ってきた。委員会って聞いてたけど、また潮江くんと喧嘩でもしたのだろうか。私を見て吃驚している留三郎を外へ連れ出す。部屋で話すわけにはいかないし、善法寺くんを追い出すのも申し訳ない。

「で、なんだ話って」
「…私ね、善法寺くんのことが好きみたいなんだけど」
「へぇ、なんだそんなことか……って、はぁ!?まじでか!」
「留三郎声大きい!」

近くに誰かがいる気配はないけど、それでも騒がれたら誰か来るかもしれない。留三郎を一喝してから話を元に戻した。

「よく言ってくれたな名前。じゃあ伊作に告ってこい!」
「馬鹿!そんないきなり言えるわけないでしょ!?」
「え、悪い」
「全然わかってないんだから!」
「そうか、お前知らないんだもんな。それじゃ無理か…」

誰が何を知らないっていうんだ(留三郎の言い訳なら年中無休で知ったこっちゃないんだけど)。とにかく、留三郎への相談は諦めた方がいいみたい。でもくのたまの子に相談してもネタにされるだけだし、他の忍たまの知り合いはちょっとな…(潮江くんとか怒りそうだし)。やっぱり留三郎で我慢しようかなとため息を吐くと、後ろから男の子の声が聞こえた。

「お、仙蔵」
「くのたまと二人で何をしているんだ」
「…お前ならいいかもしれないな。ちょっと耳貸せ」

急に現れた忍たまに何やら耳打ちを始める留三郎。一体何を話しているのやら、嫌な予感しかしない。どうやら話が通じたようで、「頼んだ」とか「任せろ」とか言い合っている。…もしかして私お邪魔かな。
身の危険すら感じて撤退しようと思ったその時、留三郎と話していた忍たまに腕を掴まれてしまった。

「あの…」
「事情はわかった。私がお前と伊作を恋仲にしてやろう」
「留三郎の馬鹿あああ!!」

せっかく留三郎のこと信じて打ち明けたのに、知らない人に押し付けんなあああ!!
立花仙蔵と私に名乗った彼をおいて、留三郎は自室に戻って行ってしまった。この白状者!今度喧嘩してたら潮江くんの味方してやる!!
というか、こんなことになるんだったら善法寺くんとお茶飲むだけにすればよかった!幸せを返せ!


視覚異常
(あなただけがキラキラしているのです)



120311
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