先日、たまたま家の近くで会った友達と久しぶりに食事したら、延々と惚気話を聞かされてしまった。どうやら高校の時に付き合っていた彼氏と続いているようで、上手くいけば1ヶ月やその辺りでゴールインする予定のようだ。
仕事ばかりで彼氏もいない私にとっては羨ましい限りである。本音を言うと早く結婚して仕事を減らしたい(漫画は好きなので辞めるという選択肢は出てこない)。…結婚するにはまず彼氏が出来ないと駄目なのに、何早まってるんだろ。
とにかく作家さんのところに行くまでまだ時間もあるし、このままコーヒーを飲みながらもう少し考えてみることにしよう。

「…名前ちゃん?」
「雄二郎先輩おはようございます」
「おはよう…いつもより早いね」
「…ちょっといろいろありまして」

私と同じでいつもより早く出社してきた雄二郎先輩は、眠そうな目を擦りながらふらりと現れた。友達の話を聞いたら家にいるのが寂しくなったなんて言えるわけもない。こういう仕事してたら男の人なんて寄り付かないのも知ってるし、先輩に私の気持ちがわかるとも限らない。
何となく1人になりたい気分なのに、雄二郎先輩は何故か私の目の前に座ってきた。…多分私、先輩の考えてること一生わかんない。

「…先輩」
「何?」
「先輩は結婚願望とかありますか?」
「ぶっ!!」
「え!ちょ、先輩!?」

何故かコーヒーを吹き出した先輩は苦しそうに噎せていた。…もしかして悪いことを聞いてしまったのだろうか。例えば先日彼女と別れたとか女の子に振られたとかあれやこれや(以下略)。
まあそうは思いつつも先輩の意見を聞く気満々で目を輝かせていると、落ち着きを取り戻し渋々答えてくれた。

「…ないとは言い切れないかな」
「先輩も(意外に)そういうこと考えてるんですね」
「…意外に、は聞かなかったことにしておくよ」

あら、と惚けた声を出すと先輩は呆れたようなため息を吐いた。そういえば他の後輩さんたちとか福田先生には怒鳴ったりするのに、私は先輩の怒ったとこ見たことないんだよなあ、何でだろ。気になるけど睡眠時間が削れるって程気にならないからいいや(どうしても気になったら鋭い福田先生に聞こうそうしよう)。
でも雄二郎先輩くらい優しかったら結婚相手の人も幸せだろうなあ。ちょっと駄目なところとか残念なところとかあるけど、何だかんだでいい人だし。うーん私も相手がいれば…。

「先輩、誰か紹介してくださいよ」
「名前ちゃんに?」
「だって!相手がいないと結婚は出来ないんですよ!?私だって婚活したいです!出合いが欲しいです!」
「出会いって……そう、だな、職場とかには…?」
「禁断のオフィスラブというやつですか」
「うん…禁断かは知らないけど…」

編集部の人たちを全員思い出してみたがどの人も結婚とは結び付かない。服部先輩(雄二郎先輩じゃないよ)は恋愛とか得意じゃなさそうだし、港浦さんも決断力に欠けるというか…。後の人は既婚者かバツイチで付き合ったりするのはね、ないですよね!!そうなると残るは小杉くんと小野寺くんってとこかな。小杉くんは見た目も性格も可愛いし、付き合うには申し分ないかな。結婚ってなると何か違うかもだけど。小野寺くんは…あんまり喋らないけどいい子だよね、多分。いまいち接点がないけどこれを気に仲良くとか…うん、やっぱりないな。
職場はそれくらいかな、よくよく考えてみると私の周りは男の人ばかりと見られる。とりあえず今日食事とか誘った方がいいかな。

「編集部で無難なのは小杉くんだと思うんですよ」
「小杉!?」
「え、ないですか?他は…小野寺くんとか」
「小杉と小野寺って…名前ちゃんって変わってるね…」
「小野寺くんはよくわからないけど、小杉くんは可愛いですよ?」

小杉くんといえばこの間まで連載してた七峰先生も顔は結構好みだったかな。性格は嫌だけど。他にも編集部のこの人は駄目とか、あの人はないとか、思ったことを全部言ってみた。雄二郎先輩は思ったより真剣に聞いてくれるし話が弾む。好みの話だからね、多分これ愚痴に入らないよね!
一通り話終わると、先輩が何か言いにくそうに口を開いた。

「あのさ、」
「はい」
「その中に、俺って入れてくれないの?」
「………ん?」

鳩が豆鉄砲を食らうというかなんというか、とにかく吃驚した。さっきの話の流れで勝手に雄二郎先輩には彼女がいると思ってたのに(そんなこんなで評価するのもあれかなーなんて)。この質問をしてくる辺り、彼女さんはいないと見た!
まあそれにしたって今まで先輩は対象外だったし。優しくていい人なんだけど壁作られたら元も子もないでしょうに。よく考えても雄二郎先輩と結婚はないかもしれないな。

「雄二郎先輩は優しいから恋人ならいいかもですね」
「じゃあ、編集部の中なら何番!?」
「うーん………、」


先輩が一番です!
(ってことで今日の残業手伝ってください)(嵌められた…)(でも一番話しやすいのは本当に雄二郎先輩ですよ?)(…仕事でも何でも持ってくればいいよ)



120119
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