みかんって何か可愛いよね。今年の冬はこたつ出さなかったからみかん食べるのやめようかと思っていたら、お隣のおばさんから箱で貰ってしまった。実家がみかん園とか素晴らしいと思うんだよね。
休憩中に持ってきたみかんを眺めてみると何故か鞄の中に二つ入っていた。まあ二つ食べられないことはないんだけどね、せっかくだし。

「雄二郎さん」
「どうかした?」
「これあげます」

何の疑いもなく手を出してくれた雄二郎さんにみかんを渡すと、ちょっと戸惑いながらもありがとうと言ってもらえた。まあ急にみかん貰ったら、誰でもその反応だよね。
こうやって誰かにあげていったらなんとか消費出来そうだし、よかった。机のはじっこに置いてある自分のみかんを見て、思わず笑みが溢れた。今日は雄二郎さんにあげたから、明日は服部さんにあげようかな。

「なんでみかん?」
「昨日お隣さんに貰ったんです。山梨のですよ」
「へぇ、いいな」
「なんか照れます」
「…なんで名前が照れんの?相変わらずわけわかんないな…」

なんだか不思議そうな目で見られたけど、よしよしと頭を撫でてもらって上機嫌になる私って現金だな(というより子供みたいか)。私が皮を剥き始めると、暫くみかんを凝視していた雄二郎さんがまた疑問を口にした。

「みんなに配ったとか?」
「今日は雄二郎さんのだけです。明日はもう少し持ってこようかなって」
「…なんで俺?」
「デスク隣だから?」

がくっ、という効果音が付きそうな感じでコケた雄二郎さんに「おぉ」と歓喜の声を上げると何故か怒られた(面白かったのになあ)。質問を疑問系で返したのが悪かったか。そういえばなんで雄二郎さんにあげたんだろ、直感?やっぱりデスク隣だし日頃の感謝から?…まあいいやなんでも。
いつも通りみかんを食べていると、雄二郎さんの視線が此方に突き刺さった。そんなに見られると流石に恥ずかしいんですけど…。

「雄二郎さんどうしたんですか?」
「ん?別に…」
「む、なんですかその歯切れの悪い感じ!私気になって9時間しか眠れませんよ!」
「いやめちゃくちゃ寝てるから。でもそれだけ寝てそのサイズって…」
「背低くて悪かったですね!」

むきー!と雄二郎さんを威嚇したが「まあまあ」と言って頭をぽんぽんされてしまった。頭撫でるのって、もしかして私が小さいからか!そういえば入社してすぐに撫でられたんだよなあ…雄二郎さんフレンドリーだなくらいにしか思わなかったよ!
ちょっと大きいからって調子に乗りやがってこの先輩…!福田くんのがおっきいこと私は知ってるんだからね!

「雄二郎さん嫌いです」
「そんなこと言うなよー」
「ほら仕事してください!し、ご、と!」
「名前構うのも仕事みたいなもんだから」
「なわけあるか!」

なんだそのお世話係りみたいな言い方!それにしても今日はいつも以上に絡まれるな(あ、みかんのせいか)。
雄二郎さんと会話しながら仕事していると、遠くから小杉くんに呼ばれる声がした。あの子おっちょこちょいだからな…また何かしちゃったのか。呼ばれた方に走っていくと、床に封筒と原稿が散らばっていて、小杉くんもあわあわしていた。…なんで封してあるはずの封筒から原稿?あ、封開いてた。

「中身わかる?」
「…わかってたら呼んでません」
「小杉くん、甘いからという理由で私を呼ぶのはやめい!」
「そ、そんなつもりじゃありません!」

だいたいそんな可愛い顔されたら怒れないに決まってんだろ馬鹿野郎!仕方なく一緒に封筒と原稿を見比べながら元に戻していく。…手伝ってしまう私ってつくづく甘いな。いやでも小杉くんって背低めだからあんまり差を見せつけられなくて嬉しいというかなんというか。「ありがとうございます!」なんて言われたらもう許しちゃってるし…ついでにみかん一粒あげちゃったよ可愛くて。これでデスク戻ったらまた雄二郎さんに甘いって怒られるな。

「なんでお前呼ぶかな…」
「小杉くんに甘いからです」
「わかってるなら甘やかさない!」
「だって可愛いじゃないですか!きゅんってなるんですよ!」
「男に可愛いとか言うもんじゃないだろ!」
「新妻くんや真城くんだって可愛いじゃないですか!」
「お前ら煩いぞ」

雄二郎さんと討論していると、後ろから二人同時に頭を叩かれた。吉田さん、ジャンプをそんなふうに使っていいんですか!まあ本人には言わないけどね。吉田さん怖いから。
素直に謝れば「痴話喧嘩は外でやりなさい」と怒られた。なんで痴話喧嘩?と吉田さんに聞いたら、今度は雄二郎さんに頭を叩かれた。――なんで?


飴とムチと嫉妬心
(雄二郎さんも吉田さんも意味わかんないな…)(名前はわからなくていい)(なんで怒ってるんですか…何でもするから許してください)(な、何でも!?)(すごい食い付きましたね)

―――

なんだこれ意味わからん。
きっとね、雄二郎さんに頭撫でられたい願望が強すぎてこうなったんです私は悪くないヨ!(←)



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