これが噂の天然記念物か、と落とし穴に落ちた六年生の忍たまを見下ろす。不運委員長なんて呼ばれているからどんな奴かと思っていたら、見た目は意外と普通。寧ろカッコいい方かもしれない。
何か言っているみたいだけど、面倒だから聞こえてないことにしておこう。どうせあっちからは私の顔なんて見えてないだろうしね。今日は天然記念物も見れたし平和だったなー。

「ちょっと!」
「あ、出てきたんだ。やったね」
「やったねじゃないよ!ずっと呼んでたのに!」

そりゃあ無視してましたからね!なんて言わずに素直に謝っておく。絶対この人嫌な奴じゃないと思うけど、出来るだけ目を付けられたくない(怖いとかじゃないけどね)。
とにかく不運って移るらしいからね!最早感染病の類いらしいよ(保健委員が病気移してどうするんだか)。すぐに立ち去ろうと思ったが、ふと視線を向けた天然記念物(仮)の肩の様子がおかしい。詳しいことはわからないが、どうやら怪我をしているようだ。…不運が移りませんように、不運が移りませんように。

「はい」
「…はい?」
「手当てしてあげる」
「え!?なんで僕が怪我してるって…」
「早く来る」

ごちゃごちゃと何か言っているが、面倒なので怪我をしてる方と反対側の腕を引っ張って医務室まで連れてきた。意外と頑固だなこいつ。まあ私も負けてはいないけど。
久しぶりに来た医務室はやっぱり薬品臭くて苦手だ。こんなところにほぼ毎日来ている保健委員って何なんだろう。

「ほら早く脱げ」
「ええええ!?」
「声でかい!治療くらいでがたがた騒ぐな愚か者!」
「ご、ごめん…」

言われた薬や包帯を持ってきて肩を見るとめちゃくちゃ赤くなっていた。これ、そのうち青くなるんじゃないかな?とりあえず冷やしてみるが症状が変わっている様子はない。私治療の知識はないからなぁ、やってあげるとか言いつつ迷惑極まりないよね。

「薬塗って包帯巻けばいい?」
「うん、ごめんね」
「いつまでも謝らないでよ鬱陶しいな。肩なんて自分じゃ包帯巻けないでしょ」

薬を塗って包帯を巻いてやれば、何故か嬉しそうに微笑んでくれた。うわぁ眩しい笑顔だな…不運がなければさぞかしモテるでしょうに。
そういえばまだ名前を聞いていなかった。大分前に留三郎からこの天然記念物の話は聞いてたんだけど、あんまりにもキャラが濃すぎて名前忘れちゃったわ。

「留と同室の人だよね」
「留三郎を知ってるの?」
「うん。忍たまの友達ってみんな留に紹介してもらうから」
「そうなんだ…」

何故か落ち込んでいるが私は留のことじゃなくて君の名前を知りたいのだよ…。今更単刀直入に言うのも恥ずかしくなってきたので無理矢理自分から名乗ってみた。どうやら察してくれたみたいで、彼方も“善法寺伊作”と、名前を教えてくれた。善法寺って長い苗字だね、なんて言ったら「名前で呼んで」と、フレンドリーに接してくれる。なんか、すっごくいい奴だな…。

「留とは最近伊作の話ばっかりしてたんだ。そしたら気になって」
「気になった?」
「うん。思った通りいい奴だな!留は不運が移るとか言ってたけど、私は伊作と友達になりたいよ」
「い、いいの?」
「?こっちから頼んでるのに、変なやつだな」

おかしくて笑うと、伊作も少し恥ずかしそうに笑った。伊作って見目はカッコいいけど、こういうところはちょっと可愛いなって思う。
翌日、たまたま伊作に会えたので雑談していると、鍛錬中の留三郎に遭遇した。留三郎は伊作によかったな、と言って、伊作は何故か少し焦っているようにも見える。詳細はわからないが、きっと女にはわからない何かがあるのだろう。勝手に納得する私を見て、肩を落とす伊作には気付かなかった。


友達の友達でした
(留三郎、友達だったなら紹介してくれてもよかったんじゃない!?)(見てる方としては此方の方が面白かったんだよ)(…二人して何の話?)



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