「そこのイケメン」
「………?」
「無視?無視なの?イケメンのくせに無視するの?」
「………え、俺?」
「周りを見てよ、あなたしかいないじゃない」
「ご、ごめん…あんまりそういうの言われたことなくて」
「無自覚イケメンとか質悪いな」
「…なんか、ごめん」
「まあいいや。今ちょっといいかな?」
「いいよ。見ての通り暇だし」
「話がわかるねぇ。いきなりだけど君に頼みがあるんだ」
「なんだい?」
「実はさっき裏庭で告白という名の脅迫をされてね」
「…告白のどこが脅迫?」
「まあ聞きたまえ」
「はぁ…」
「その告白してきたのが全く知らない奴でさ、咄嗟に彼氏いるって嘘吐いたのよ」
「うん」
「そしたらそいつがさぁ、“こいつくらい顔が良くないと認めない!”なんて言って君の載ってた校内新聞突き付けてきたわけなんだよ」
「…彼氏のフリをすればいいのかい?」
「え?イケメンにそんなことさせられるわけないじゃん」
「じゃあ何を…?」
「そいつにさ、“俺レベルのイケメンなんて滅多にいるわけないだろう?人のことを言う前に自分の顔見直して来いよ”って言ってよ」
「それ完全にナルシストだよ。というか声真似やめて似てるから」
「彼氏よりマシでしょ」
「彼氏の方がいいよ」
「変わってるなぁ」
「名字さんの方が変わってるから」
「………。」
「な、何?」
「…なんで私の名前知ってるの!?私は君の名前知らないのに!」
「知らないのに声掛けたの!?」
「だから最初イケメンって呼んだんじゃん!」
「佐伯虎次郎だよ!」
「ご丁寧にどうもね!それよりなんで私の名前知ってるの!?私有名人!?」
「有名人といえば有名人じゃないかな」
「なんで?」
「そりゃあ…女の子に人気だからね」
「ほんと?嬉しいなぁー…」
「(可愛いなぁ…)」
「佐伯も女の子に人気あるだろ?イケメンは選り取り見取でいいよなぁ」
「そんなことないよ」
「む、謙遜されるとムカつく。カッコいいんだから素直に認めなさいよ」
「褒められてるんだか怒られてるんだか…」
「どっちもだよ!」
「どっちもなんだ…」
「とにかく、その相手威圧してくれればいいから!イケメンオーラで!」
「そんなもの出したことないよ」
「常にだだ漏れだよこの無自覚イケメン!何食べたらそんなにかっこよくなるんだよ馬鹿野郎!」
「知らないよ!さっきからなんなの!?」
「名字名前だよ!」
「俺は君のこと知ってるって言ったろ!」


「いやぁ、助かった助かった」
「話せばわかる子でよかったね」
「佐伯ってば説得力あるね!いいお父さんになれそう!」
「褒めてる?」
「褒めてる褒めてる」
「ならいいや」
「なんか佐伯とは仲良くなれそう。私性格がこれだから男の友達いないんだ」
「え?意外だなぁ」
「基本的にはモテない男子から僻まれるよ。告白なんて初めてだから焦っちゃったんだ」
「名字さんのこと気になってる奴って、結構いると思うんだけど…」
「えー…嘘だな」
「嘘じゃないよ!俺だって、」
「おーい!サエー!!」
「あ、あれテニス部の…なんだっけ」
「(邪魔された…)バネさんだよ、黒羽春風」
「サエって佐伯?」
「そうだね」
「ふーん、なんか可愛いな。私もサエって呼んでいい?」
「え…!?う、うん、いいよ」
「いいな可愛くて」
「その…名字さんの名前の方が可愛いと思うけど…」
「マジか。じゃあサエも名前で呼んでよ。名字さんとか呼ばれたことなくて恥ずかしいからさ」
「う、うん……名前、ちゃん」
「名前ちゃんかぁ…女の子っぽいね」
「女の子でしょ」
「いや、性格が性格だから。今日はありがとねサエ!また今度ー!」


「…また今度、か」
「さっきサエの隣にいたのって名字だよな」
「知ってるの?」
「一回話し掛けられたから」
「…なんて?」
「“その髪型はおしゃれですか寝癖ですか?”って」
「…唐突だな」
「面白い奴だよな。今度俺にも紹介してくれよ」
「え……うん、まあ…そのうちね」


やはり敵は多い
(うーん、ちゃん付けってくすぐったいなあ…)(俺も名前ちゃんに呼ばれるとくすぐったい…)(なんで?)(…なんでも)



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