「もうやだ…」

思わずそんなことを口に出すと、目の前に座っていた跡部がため息を吐いた。そんな盛大に吐かなくてもいいじゃないか。せっかく友達が遊びに来たんだからさ。…軽く練習の邪魔してるし、話の内容は8割が愚痴なんだけどね。聞いてくれる人が跡部以外いないんだよ。そして氷帝近いし。
本当は彼氏のところにでも行こうと思ったんだけど、なんか忙しそうだったから先に学校を出てきてしまった。どうせ、どうせね、女の子に声掛けまくってるんだよ。なんであんな奴と付き合ってるんだろう、自分でも意味がわからなくなる。

「俺様は暇じゃねーんだよ、そういうことは本人に言え」
「今に始まったことじゃない上にナンパしない千石なんてちょっと怖い」
「お前何がしたいんだよ…」

跡部が呆れるのわかるけど、私の考えもなんとなくわかってほしい。女の子が好きで軽いと評判の千石清純。彼の押しが強過ぎて付き合ってみたものの、その酷いナンパ癖は未だ健在。私といる時はしないが、それ以外では他の女の子と歩いているところをいろんな子に目撃されている。
…なんか、そこまで悪気なくやられると怒るのも面倒っていうか…。第一、これは千石のキャラなんだから今更崩すのも悪いし…。「そんなこと言ってる場合じゃねーぞ」と跡部は言うけど、仕方ない。千石のキャラと私のヘタレが原因なんだもん。跡部様にはわかんないし。

「跡部ー、なんとかしてー」
「千石のナンパ癖は知らないが、お前が悩まなくなる方法ならなくはないぜ」
「あ、それでいいや」
「相手が平気でやってんだから、お前もすればいいだろ?」

…いや、私にナンパは無理でしょ。しかし跡部曰くナンパに限らず他の男の子と接触するだけでもいいらしい。確かに千石ってナンパはするけど、あれ浮気してるわけじゃないんだもんね(お茶して終わりみたいだし…)。
そっか、千石がしてるんだから、私もしてみればいいんだ。楽しさ知ったら納得出来るかもしれないし、あんまりモヤモヤしなくて済みそう。

「うん、やる!やってみたい!」
「千石の反応が楽しみだな」
「でも相手いない…」
「ここにいるだろ」
「!…跡部やってくれるの!?」
「たまにはお前のお遊びに付き合ってやるよ」

一瞬鼻で笑ったのは聴こえなかったことにしてやろう。それにしても、跡部って優しいなぁ。口悪いしウザいけど、頑張り屋さんだしイケメンだし!モテる理由もなんとなくわかったよ。
跡部が強力してくれるのは問題ないとして、千石の方がちょっとな…。隠れてやるのはなんか申し訳ないし、悪いことしてるみたいだし。跡部は気にするなって言ったけど、これは私のポリシーに反する。

「千石に言ってみる」
「…お前結構酷なことするな」
「だって悪いことしてるみたいじゃん、千石には嫌がる権利ないし」
「わかったわかった、んじゃあとでメールする」

なんか跡部が優しくて気持ち悪い。優しいに越したことはないんだけどね(いつもが酷いんだよ)。部活の時間割いてくれた時点で今日は機嫌が良いってわかってたけど、まさかここまでしてくれるなんて。
携帯に登録してある跡部のアドレスを見てちょっと嬉しくなる。ついでにメール機能で跡部用のフォルダを作成してみた。女友達や家族など頻繁にメールする人だけ振り分けているのだ。…千石とはメールするが、なんだかフォルダ分けしていいものじゃないと思う。というか私が千石のことそこまで想ってるわけじゃないし。
…明日、楽しみだなぁ。


―――


「名前ーっ!」

帰りのHRが終わったので帰ろうとしていると、いきなり後ろから誰かに抱き付かれた。まぁ、こんなことするのは千石しかいないだろう。人前だんだからやめてほしいわ。
無理矢理引き剥がして用件を聞くと、今日は部活が休みになったらしい。ああなるほど、デートのお誘いか。いつもだったら用事もないのだが、生憎今日は先約があるのだ。跡部とお茶か…なんか緊張するな。
千石に「ごめん、デートだから」と言って断れば、ぽかんと口を開けて唖然としていた。そんなに驚かれるとこっちが吃驚なんだけど…。

「俺以外と…?」
「今日も部活だと思ってたから先約入れちゃった、ごめんね?」
「い、いや、その…デートって、誰と?俺の知ってる奴?」
「知ってるよー、跡部だもん」

へらっと笑って返せば、千石は予想以上に吃驚していた。確かに私は千石の遊んでる女の子のこと知らないけど、跡部は有名だから誰でも知ってるよね。
その後もなんでとか、俺より跡部なの?とか言われたけど、自分のこと棚に上げてそんなこと言われても…。「千石だって同じことしてるじゃない」と言ってしまった。驚いている千石を見ても、動き始めてしまった口は止まらない。これだから自分勝手な男は面倒なんだ。
くたばれ、馬鹿。


恋愛の虚飾と現実
(別れるんだったら、私をフってくれればいい)

―――

続…き、ます!テニプリ夢久々だなぁ…昔とは好みがだいぶ変わりました。千石好きだよ!佐伯とかも書きたいです。


(title)確かに恋だった
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