一緒に

2012/04/27 16:07



「……んっ………」


朝特有の寒気が少し覚醒した僕の体を襲う
まだ起きたくなくて隣にあるだろう暖かさを求めて手を伸ばした。
だけど伸ばした先にある筈の暖かさが無くて僕は無理やり目を開けて隣を確認したら、そこにいるはずのアルヴィンはいなかった。


「…アルヴィン…?」


見あたらないアルヴィンにどうしたんだろうと体を起こす。
昨日は疲れて一緒に寝たはずなのにと思い出していると部屋の向こう、台所の方から皿を割る音と何かが焦げた匂いがしてきた。
近くに置いてあったアルヴィンのシャツを着て台所に向かってみると、割れた皿を困ったように見ていたアルヴィンがいた。その奥にあるコンロの上には焦げたベーコンらしきものが入ったフライパンがあった
僕に気づいたのか顔を上げたアルヴィンは申し訳なさそうな顔をしていた。


「わりぃ、起こしたか?」

「ううん、大丈夫だよ。それより怪我してない?」


そう聞きながら割れてしまったお皿とフライパンの上の悲惨なベーコンをアルヴィンと一緒に片付ける





「どうして料理してたの?」


大体片付け終わった後アルヴィンに理由を聞くと苦笑混じりに話し始めた


「いつもやってもらってばかりだから、たまにはって思ってさ。こんな事になっちまったけど」

「そっか……。あ、じゃあこれから一緒に作ろうよ」

「ジュードと?」

「そう。簡単なものなら作れるようになろう?」


僕は頷いたアルヴィンと一緒に、台所へ向かった






「こうやって、フライパンに直接割って入れて」

「こう、か?」

「うん、上手いじゃないアルヴィン」


アルヴィンのほぼ初挑戦(初挑戦はさっきの焦げたベーコン……だと思う)の料理は目玉焼き。
卵は無事だったから一番簡単で手っ取り早く作れる目玉焼きにした


「塩コショウを振ったら、水を入れて…少なめでいいからね」

「おう……これぐらいか?」

「そうそう。後は蓋をして蒸すだけだよ」

「…料理ってこんなに大変なものなんだな」


蓋越しに蒸されている目玉焼きを見ながらアルヴィンは呟く


「大変、だけどね…」

「ん?」

「楽しいんだ、作るのが。特に誰かの為に作ったりするのは」

「…それって…」

「え?…あ、そ、そういう意味じゃっ!///」


無意識に恥ずかしいことを言ったと自覚した途端顔が真っ赤になる


「愛されてるねぇ、俺」

「そう、だよ…」

「ジュード?」

「アルヴィンに食べてもらうの嬉しい、から…///」


恥ずかしくてアルヴィンから目を逸らしていると不意にアルヴィンが笑った気配がした


「何笑ってるの」

「いや?いい奥さんだなって、な」

「僕、男だけど」

「俺もうジュードの飯以外食わない」

「っじゃあ、僕はアルヴィン以外には作らないよ」


そう言ってアルヴィンを見上げるとニヤリと笑っていた


「その言葉忘れんなよ?」


耳元でそう囁かれて背筋がゾクリとして、身をよじって逃げようとした時大事なことに気がついた


「あ……」


目の前で蒸され続けている目玉焼きに。


「アルヴィン!もうお皿に移さないと!」

「あー、そういや放置してたな」

「ほら、早くお皿出して」


火からおろした目玉焼きをアルヴィンの持ってきたお皿に盛る。
焼き終わったパンも別の皿に移して、それをテーブルに置いて向かい合って座る


「いただきます」

「どうぞ召し上がれ」


2人で作った朝ご飯はいつもより美味しく感じて、幸せな時間だった。






「あ、アルヴィン夜ご飯は何にする?」
「夜?………マーボーカレーがいい。」
「アルヴィン、マーボーカレー好きだよね」
「ジュードが作るから余計旨いんだよ」
「もう…///」
「また、一緒に作るか」
「そうだね…」


いつまでもあなたと一緒に……




End






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