juju | ナノ





 もし自分が食べ物だったら、あの人に沢山栄養をあげる。
 もしあの人が望むなら、自分は犬にも猫にもなれる。

「これ、おいしいね」

 もし自分が、そのトマトソースのトマトだったら、この人に抗酸化物質を沢山与える。

「傑も食べな」

 食べているのを見ているだけで満足だと言ったら、ずいぶん笑われた。
 でもそういうものだ、所詮愛など。
 どうでもよいことが全て楽園に思える。

「まやかしでも…なんでもいいさ、君がいれば」

 この人が望むなら自分は女にもなれる。
 たとえこの人が男でも、好きになってた。
 たとえ自分が女でも、好きになってた。

「トマトソースが一番好き?」
「いや、カルボナーラとジェノベーゼが好き」
「次はどっちが食べたいか、考えておいて」

 この人が望む全てを与え、この人が望む全てに成り代わる。
 愛など所詮そんなものだ。
 愚かだし、くだらない、馬鹿丸出しだ。

「△、なんでも言ってごらん」

 なんでも?と聞き返す時、このひとの唇はいつにも増して艶めいて見える。
 そうだ、なんでもいいのだ。
 愛を目の前にして抗うなど実に愚かだから。

「そうだよ、なんでも」


なんでもいいか
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