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 あの人の腕に抱かれると、海の音が聞こえる。

「君の瞳が青いからかな」

 青いものは綺麗だ。白い肌を裂けばその下に海が溢れているような気もする。

「△は海が好きなの?」
「うん」
「じゃあ、今度僕と一緒に行こうか」
「ううん、行かなくていい」
「そうなの?」
「うん、だって、もうここにあるから」

 遠く向こう側から海水が溢れる。胸に顔を埋めるとまるで溺れるようだ。

「△、大丈夫だよ」
「知ってる」

 海がある。呼吸しているのに溺れている。ずっとこのままがいい。このままでいい。


ほんとうの海を知っている
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