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 なんで泣いているのか聞くと、よくわからないというので、悟は思わず女の頬をつねった。

「いたい」
「△、涙が出るのにはそれなりの理由があるんだよ」

 言ってごらん、と促す。女はぼうっとして、腫れた目元で呟いた。

「逃げたい」
「そっか、いいじゃん」

 逃げちゃお。このグットルッキングガイ五条悟先生に任せなさい。

「どこに逃げたいの?お前の行きたいところにどこへだって連れてってあげる」

 ね、と女の頬を両手で包み込むと、涙で膜を張った瞳が夕陽に輝いた。
 少しだけ息を吸った後、スローモーションのようにゆっくりと瞼が動いた。

「天国」

 女の唇が行き先を告げる。美しく悩んだ分だけ、この女は悟を誘惑する。

「いいよ」

 細い手首を引っ張って外に出ると、気が済むまで空中を散歩した。
 散歩している間、女の目元からぽろぽろ零れ落ちた涙が雨のように地上に降り注いだ。
 涙が染み込んだアスファルトを、悟は少し羨ましく思った。


きみの涙を知る者
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