juju | ナノ





「これでもまだ僕のこと弟みたいって思うの?」

 胸の膨らんだところを甘噛みすると、細い喉の奥から震えるように鳴いた。

「乙骨」
「憂太って呼んでよ」

 口付けをするたび、弓のように身体がしなる。
 身体が熱くて、獣のように飢える。

「ごめ、」
「△さん」

 一段低い声で名を呼ぶと、目尻から涙が落ちた。
 唇が桃のように熟れている。水が滴るかと思うほど、艶めいて戦慄く。

「僕が怖い?」
「ち、ちがう」
「それなら、気持ちいい?」
「あ…」

 ああ、また泣かせちゃった。ぽろぽろ雫を落としながら浅く息をしているのを、じっと見下ろす。
 眉を寄せてしゃくりあげているのを、頬を撫でて宥めてやる。

「憂太…」
「△さんはさ、僕のものだって自覚が足りないよ」

 雨が降り頻るように、痕を残す。鬱血したところから花のように匂い立つ。

「ねえ、△さん」
「あ…」
「本当はもっと優しくしようと思ってたけど、ちょっと痛くするね」

 声も出ないというように、切なく瞬きして、また泣いた。
 濡れそぼった唇を舐めると、胸に残った歯形を撫ぜた。


死なない程度の惑溺
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