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 何考えてるのと聞かれて、肩が跳ねた。

「折角、僕といるのに、なに考えてるの」
「いや、」

 いやじゃなくて、と手首を掴まれる。恐ろしくはない。ただいつ殺されてもおかしくはないだろうとは思う。

「もしかして、傑のこと考えてた?」

 図星を突かれて、あ、と思わず声が出た。

「へえ、あいつのこと考えてたんだ、僕がいながら」

 この男は犬歯が一際尖っているのだと、知っている。だから肌を咬まれると、いつも、想像していたよりも随分痛いと感じる。

「ムカつくなあ」

 本当に頭にきているとき、この男は目隠しを外さない。顔がよく見えないまま手酷く抱かれて、泥のように眠りに落ちる。

「あの、五条さん、ごめんなさ」
「謝んなくていいよ」
「あ、」
「その代わり、今日は少し痛くするよ」

 首筋を思い切り咬まれる。この痛みは、多分血が出ているだろうと、声を我慢した。

「声、我慢しないでちゃんと聞かせて」
「五条さん、」
「△、お前は僕だけのものなんだよ…誰にも触らせたくない…本当は見せたくもない…お前は僕のそばからいなくならないって、安心させてほしい…」

 白い髪がしなだれかかる。覇気のない背中を撫でて、首筋の痛みを甘受した。


きみはいつも涙の気配がするね
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