白い腿の上で瞬きをすると、もう夕方だった。 「あー…俺」 「随分寝てたね」 甚爾くん、とその唇が呼ぶ。 「悪い」 重かったろう、と頭を避けようとすると、細い指で遮られた。 「もっと寝てていいんだよ」 「でもお前、足痺れただろ」 「全然、平気だよ」 左頬を撫でられると、瞼が下がってきた。ああ、と言い訳する暇もなく、また太腿の上に寝る。 「まだ眠いんでしょう」 「ああ」 「膝枕、好き?」 「ああ…」 柔らかい。暖かい。死ぬときもこのくらい柔らかかったらいいのにと、少し願った。 「でも、実際んとこ、そんな穏やかじゃあなかったな」 死ぬとき、痛かったし、寒かった。独りだったし、柔らかくなかった。 「お前が死ぬときは、柔らかいといいな」 瞼を閉じると、涙が出そうな気がした。あのとき、太腿の上で見た夢を、もう一度見たかった。 正夢のかたまり |