「どんな風に死にたい?」 突拍子もないこと聞くなあ、と夏油は彼女の横顔を見た。 「急にどうしたんだい」 「いや別に」 長い睫毛を伏せて、徐に前髪を弄る。そういえば前髪結構伸びたなと、夏油は白い指先に見惚れた。 「死ぬ時か…痛くないといいかな」 「確かに」 「そういう君はどんな風に死にたいんだい?」 んーと顎に手を当てて斜め上を見る。不細工な蠅頭が右肩の上を通り過ぎて、どこかに消えた。 「ひとりは嫌かな」 「はは、確かにね」 「でも誰かを道連れにするのもやだな」 「私を連れて行けばいいじゃないか」 「え」 白い肌でこちらを見る。ようやくこっち見たな、と夏油は思った。 「あんた私と一緒でいいの?」 「いいよ、君とずっと一緒に居たいから」 「なにそれ、告白かよ」 「告白してるんだよ」 頭いい癖に、本当に鈍いなあと、思わず笑った。 「何度も告白じみたことを君に言っているのに、気がつくのがホントに遅いよ、△」 ぽかんとする口の端に唇を寄せると、あ、と空気みたいな声が出た。 「夏油」 「愛してるよ、△」 彼女の左肩に蠅頭が留まる。それを無視して、唇を合わせた。 キスした分だけ寿命が縮まればいいのに |