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 正直、めちゃくちゃ焦った。

「五条くん、来てくれたんだ」

 真っ白な顔して、目を細めてベッドに横になっていた。

「もう平気なのかよ」
「だいぶいいよ」

 ぶっ倒れたって言うから、てっきり呪霊にやられたんだと思って急いで来たら、硝子にあいつは貧血だと聞かされた。

「たまになるんだよね、貧血」

 乾燥してかさかさになった唇で、うわごとのように天井に向かって呟いた。

「辛いのか?」
「うーん、ぼんやりする」
「眠いのか?」
「ちょっとね、でも」

 君が来てくれたから、目が覚めた。そう言って、蛍光灯の光に透けた俺の髪を見る、その目。

「五条くん、汗かいてるね」
「…急いで来たんだよ、ぶっ倒れたっていうから」
「心配した?」
「悪いかよ」
「いいや、君はかわいいね、五条くん」

 おいで…と手招きされる。ぎこちなく側に寄ると、額の汗を拭われた。

「おい、汚ねえだろ」

 手首を掴むと、何も言わずに少し笑った。

「五条くん」
「…なんだよ」
「私、君のこと、神様みたいだと思ってたんだけど、でも、」

 君も人間なんだね、と、嬉しそうに呟いて、そのままあいつは眠ってしまった。
 怖くなって息してるか確認したら、ふつうに寝息立ててたから、ちょっとだけ安心して、俺も横でしばらく眠った。


天使不在の一室より
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