喉の奥が甘いと思ったら、次の瞬間、腹の底から花弁を吐いた。 「げえええええ」 口酸っぱい。舌が痛い。腹の中が渦を巻いている。 涙目で床を見ると、ゲロまみれの花が散らばっていた。 「嘘でしょ」 吐いた花弁は全部白かった。自分の髪の色と同じだと思った。 「あはは…はあ、そういう感じね」 なるほど。こんなに好きだと思ってなかった。 「そっか、僕、ゲロ花吐いちゃうくらい好きなんだ」 あのひとが好き。あのひとの爪の色を思い出すと涙が出る。 「五条くんの目と同じ色のマニキュア、買っちゃった」 小さい爪に、青い色のマニキュアを塗ってた。すごく綺麗だと思った。 だから、あのひとには自分の目の色があんな風に見えているんだって、知ったとき、ほんとうに嬉しくて泣くかと思った。 「ねえ、五条くん、君が私をずっと見てくれているみたいね」 そうやって笑ってた。そんなことしなくてもずっと見ていてあげるって、言えばよかった。 「僕はダメダメだね、君にひとこと、好きとさえ言えないのに」 花を吐いてしまう。吐いた花弁の色も、あのマニキュアとおんなじ青色がよかった。 爪の先に愛の色 |