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 ただ生きているのを確かめたかった。理由なんてそれだけだった。

「どう?」

 生きてる?と、汗の滲んだ額で、女はしっとりと笑った。

「ああ…」

 生きているな、と組み敷かれた肌を舐める。塩の味がする。

「それは良かった」

 弧を描く、その唇の、美しいこと。天女のようだ。

「時折、お前が幻なのではないかと、そう思うことがある…」

 この心が見せるまやかしか。妖に騙されたか。何度も迷って肌に触れる。確かめて安堵する。

「△…お前が生きているなら…こうして触れられるなら…俺はそれだけでいい…」

 愛しているという言葉は陳腐なのか。他に何と言ったらよいのか分からぬ。分からないからただ優しく触れる。そして微笑む女を何度も抱く。


唇の届く距離で
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