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 溶けて無くなる。手のひらから崩れ落ちて消える。土に還る。ここが墓になる。

「△……!」

 呪霊に腹を喰われて内側から膿んでいった。肉が腐る臭いがする。白い肌が黒く焦げて、塵になって宙に舞った。
 煙草の灰のようだった。血管が花火のように爆ぜた。

「傑くん…」
「△…いま硝子が来るから…だから…」
「いいの…」

 もういいの、と燃える体で静かに泣いた。

「傑くん、それより、私、死んだらきっと呪霊になるから、そしたら、」

 瞳の色が、煌々と輝いたように見えた。

「私のこと、どうか、食べてね」

 おいしくなかったらごめん。少しだけ微笑んで、そして両手の上で、体も何もかも、本当に消えた。



 それからしばらくして、あるとき、部屋で寝ていたら、足元から急に影が湧いてきた。

「傑くん」

 足元から這い上がってきて、横にそっと寝そべった。

「もしかして、△かい…?」

 あの形のいい唇で、生きてたときよりずっと美しく、彼女は笑った。

「ねえ、傑くん、約束、覚えてる?」
「勿論」
「私、こんなふうになってしまったけど…」
「そんな、綺麗だよ、すごく」
「ほんとう?じゃあ…」
「ああ…君のこと、私が食べてもいいかな?」

 うん、と彼女は一層嬉しそうにして白い歯を見せた。

「△…私とひとつになろう…おいで…」

 手のひらを差し出すと、彼女は自ら黒い玉のようになって、大きな手の中にすっぽりと収まってしまった。

「ああ…私の△…」

 愛してるよ、なんなら、ずっとこうしたかったんだ。
 一息に飲み込むと、いつもと違って、とても甘い味がした。


溶ける前に食べて
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