あのとき土に埋めなかったのを後悔していた。焼いて、残った骨を土に埋めて、気が向いたら逢いに来れば良かった。 そのときに手向ける花は必ず君がいちばん嫌いだった花にする。そうしたら死んでるのが嫌になって戻ってきてくれるかもしれないから。 「夏油くん」 だから散々嫌がらせして、嫌がらせして、だけど残った骨は慈しむように胸に抱き、涙を流し、土を濡らし、それが蒸発して雲になり、雨を降らし、君の骨から芽が生え、私に絡みつき、その中で私も死に、そうしてふたりで一本の木になり、また雨に濡れる。 「私の大好きな夏油くん」 夏油くん、君は死にました。片腕をなくして。私の知らないところで死にました。 私はやっぱり悩んで、君の骨を庭に埋めることにしました。裏庭のトマトの横に埋めることにしました。 君が死んで、身体は焼かれ、残された骨を私が粉々に砕き、跡形もなく砕き、それを持ち帰って埋めました。 「私の夏油くん」 君は来年の夏、芽吹くでしょう。そうしたら、そこに私も横たわり、ふたりで一本の木になりましょう。 約束です。 茹だる延髄 |