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 包帯を巻き付けた血塗れの手で女の頬を撫でてみた。するりと撫でると、包帯越しに皮膚の柔らかさが伝わってくる。なんとなく安心して、ぼうっとした。

「悠仁」

 名を呼ばれたような気がした。睫毛を一本一本じっくり見てみる。そのたびに、まばたきしていて、瞳孔が光に透けてきれいに見えた。

「死にそうな顔してるね」

 くすくすと女が笑う。自分は相変わらずぼうっとしている。顎の下に手を伸ばして、緩く首を絞めると女の肩がぞくりと震えた。その姿に、思わずきゅんとして心臓のあたりが痒くなった。

「人の首絞めるの好きだね」
「あー…まだ殺気立ってるのかも、俺」
「めちゃくちゃ殺したいような顔してるよ」
「このままだと、あんたのこともまじで殺しちゃうかも」

 物騒な会話だなと思う。傍目から見ても物騒なことをしていると思う。女の首を絞めながら眠そうにぼんやりして、ゆらゆらと船をこいでいる。

「首絞めながら眠んないでね」
「じゃあ夢の中なら殺してもいい?」
「はは、いいよ」
「いいんだ?思う存分いたぶってから殺そうかな」
「悠仁って物騒な性癖持ってるよね」
「あんたも大概でしょうが」

 そういえばこの間この女に指を噛み千切られそうになったのだった。正直、噛み千切られてもいいと思っていた。

「あーねみぃ」
「さっさと寝な、んでその殺気おさめて」
「俺に膝枕してくれない?そしたら眠れちゃうかも」
「しょうがないなあ」

 悠仁が寝てる間に爪でも剥がしてやるかね、とくつくつ笑う女にもう一度きゅん、としてそのまま眠りこけた。


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