juju | ナノ





 身のうちに修羅を飼う。呪霊を飲み込むたび、腹の中に地獄が増える。

「お、ええ、」

 乾いた土の上で蹲って、誰も来るなと静かに願う。お願い見ないで。汚いから。惨めな声は誰にも聞かれたくはない。

「、△」

 好きな女の名を呼んで、耐える。耳の近くで蝿が飛ぶ。

「……△…」

 つらい。くるしい。もういや。こんなのいやだ。いつまで続くのか。
 飼い慣らした修羅の数だけ、いつも天国から遠ざかる。

「おかえり」

 傑。名を呼ばれる。寮に帰るといつも、ベッドの上で枕を抱き締めている。

「ほら、おいで」

 起き上がって、座り直すと、ほら、と膝の上に寝かせられる。

「今日は」
「全部で三体」
「そう…」

 可哀想に。私の傑。ほどいた髪を撫でられる。

 ああ、この女が居なかったら、今頃自分はどうなっていただろう。

「傑、いい子」
「…もっと」

 細い腹に腕を巻きつけ、顔をうずめると、柔軟剤の匂いがした。
 その嗅ぎ慣れた匂いの中で、眠くなるまでずっと泣いた。


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