juju | ナノ





※他ジャンル過去作セルフリメイク


 内股から流れる経血に指を這わせると、とろりとして生温かった。

「汚いよ」

 手を退けようとするのを遮って、指の上で乾いていく血を眺める。鉄の匂い。痛み。

「汚くない」

 汚くなんかない。これが欲しかった。この血の優しさが、安心が、ずっと欲しかった。

「我慢していないと、全て言ってしまいそうになるな」

 ままならない、と思う。何も頼りにならない。ひとりぼっちな気がする。どろどろと絶え間なく流れる経血をみて、これを舐めれば女とひとつになれるような気がした。

「舐めちゃだめだよ」
「なぜ分かる…」

 どうせろくでもないこと考えてるんでしょ、と前にも言われた。大概ろくでもないこと考えていた気がする。

「よく分からん、これが寂しさなのか」
「さあ、どうだろう、生まれたてだもんね君」
「肉体を得るとは難儀なものだな」

 ベッドがもう血でどろどろだった。これはもうマットレスもどうせシミがついているのだろう。自分の部屋ではないしどうでもいいか、と考えるのをやめた。

「慰めろ」
「いまやってんじゃん」

 頭撫でてあげてるでしょ、と前髪の先を引っ張られた。その指が細くて、急に頼りなくなった。

「悲しくなる」
「見た目に反して意外と繊細なんだもん君」

 細い指で頬を撫でて、そのままベッドの上に投げ捨てる。それさえ甘くて、脳がくらくらした。

「△」

 痛そう、可哀想、辛そう、苦しそう。優しくしてあげたい。大事にしてあげたい。そっと触って、毛布で包んでやると、暖かいのか、目の端がきゅっとなった。

「このままふたりで眠ろうよ」
「そうだな」

 俺も眠いんだ、と一緒に毛布に包まる。女に抱きしめてもらう。生まれる前のような感覚がして、安心して眠った。


水中遊泳
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