思い切り肩を噛んでも、怒られたことはなかった。
「恵」
そうやって名前を呼んで、少し呆れたような顔をして頭を撫でてくれた。それがすごく好きだった。
「あんたは俺のもんだ」
痕を付けるのはできるだけ目立つところがいい。寄ってきた男は、出鱈目に付けられた痕を見て、嫌そうな顔をして帰っていく。そのあと細い肩を抱いて、頸のよく見えるところに痕を付ける。そうするとまた、ちょっと困った顔をして頭を撫でられる。
それが凄くいい。
「△さん」
今日も今日とて、肩を噛むのをやめない。
愛に傷はつきものだから
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