女の首は細い。細くて白い。頼りなくて、透き通って、筋が浮いていて、病のようだ。その脆そうな首をなぞる。この不健康さが好きだ。 「お前のがよっぽど死にそうな顔してるだろう」 女に目の下の隈を撫でられた。細い指。じっとりと女の顔を見つめると幸薄そうな顔で少し笑った。 「私の顔になんかついてるか」 「いや」 「死にそうだなって思ったんでしょう」 実際女は死にそうだ。死なないだろうけども、自分は死なせないだろうけども、それでもいつ死んでもおかしくはなさそうな見た目だった。 「△、お前を見ていると恐ろしくなる」 毎朝、女を起こしに行くのが怖かった。死んでたらどうしよう、と思いながら冷えたタオルケットを捲っていた。そうして眩しそうに女が目を開けると、安心して口付けをしてから抱き締めた。 「脹相、死なないから、私、安心して」 「怖いものは怖い」 抱き締めると折れそうだ。折ってもいいかもしれなかった。不健康な体を気にかけてやるのが、壊れた体を治してやるのが、そうやって手をかけてやるほうがよっぽど安心できた。 「ずっと傍にいさせろ」 腕は細い、首はもげそう。血管は浮いている。抱き締めて形を確かめていないと怖い。きつく抱きしめると、女は苦しそうに笑った。 「力強いなあ、君」 よるべのないふたり |