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 そろりと首筋を撫でると、切り揃えられた毛先が揺れて、震えた。

「こっちを向け」

 振り返った顔は、前髪を切ったせいか幼く見えた。

「脹相」

 己の名を呼ばう唇が小さかった。乾燥しているのか、少し端が切れていた。痛いだろう。赤く滲んでいる。それを指で拭う。女は眉を顰めて首を横に振った。

「痛い」

 痛い、と手の甲で口の端を拭う。手の甲に赤く線が伸びる。

「乾燥しているんだろう」
「もうそんな季節か」
「見せてみろ」

 もう一度頬を掴んでこちらを向かせる。薄く切れ目が見える。甘い香りなぞしないはずなのに、脳みそがくらりと揺れる。

「脹相、ぼうっとしてる」

 細い指で鼻筋をすうっと撫ぜられる。口の端からほつほつと赤く滴が漏れる。それを拭う。

「まずっ」

 血のついた指先を女の口に捻じ込む。女は抵抗もしないでされるがまま己の指を咥えている。

「唆るな」
「なにを」

 馬鹿な脹相、と女が指を咥えたままにやにやする。口の中をゆっくり掻き回す。熱い。そのまま指を引き抜いて自分の口に咥えた。

「俺には甘い」
「変態」
「結構だ」

 口の端を舐める。己にとってこの女の血は一生甘いのだろう。


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