部屋に一人で寝ている。開け放した障子の外で、なにやら外ががやがやと騒いでいる。身体が動かない。鉛のように重い。 「……▽、▽はいるか」 忍びの名を呼ぶと、いつのまにか枕元に影が降りている。綺麗な顔があきれ返ったようにこちらを見ていた。 「▽、あのあと、俺はどうした」 「どうもこうもありません、この通りですよ幸村様」 「身体が動かん」 「当たり前です、無理をなさるからです」 「しかし」 「しかしも何もありゃしませんよ、まったく、黙ってお休みください」 もう少しで死ぬところだったんです、と半分怒りながら忍びが言った。 「しかし、俺もお前も生きている」 「そりゃ生きてますけど……」 「それでよいではないか」 「あほかあんた、よかありません」 「なぜだ」 なぜでもですよ、このばか主人が、と悪態をつく女の腕を引っ張って、よろけたところを無理やり抱きしめる。ぎゃあぎゃあ騒ぐ顔を自分のほうにむけて、唇を舐めると、途端に大人しくなった。 「……▽」 静かになったのをいいことにまた首元に顔をうずめる。花と血の薫りが、骨にこたえるほどにおう。熱い。互いの体が、焼けるように熱い。戦のあとだったからなおさら。抱きしめる腕に力が籠った。 どう足掻いても恋しくなるらしい |