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私は死ぬのが待ち遠しかった。はやく息を止めてしまいたくてならなかった。生きることは刑罰だ。死んでしまえば、人はすべての柵から解放され、恐怖も悲しみも捨て去ってしまう。きっと。

「私はずっとそう思いながら生きてきた」

それでも臆病だから、このフェンスを乗り越えることも、自分の心臓に包丁を突き立てることも叶わなかった。生きるのは恐ろしいが、それよりも痛みの方がよっぽど恐ろしくってならなかった。

「私は死んでしまいたかった」

だからこうして漸くフェンスの向こうに立っているのに、あなたは、なぜだか私を止めようとする。

「▽、行くな」

今にも張り裂けるんじゃないかと思うほどに痛々しい声で私の名前を呼ばうから、ひたりとつい足が竦んで、どうしてか、死ねそうにない。

「なんで」

私は死にたかったのだ。待ち遠しかったのだ。それでもあなたは私を生かす。ああ。優しいひと。




ぼくがいないせかい
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