空気を切り裂くような声で、名を呼ばれる。思わず目を開ける。一瞬で視界が光に包まれて、次に青い空が見えた。海。これは海の色だ。潤っている、と思う。 「三成」 違うやっぱり海なんかじゃない。女に名を呼ばれている。その女が、泥の上に横たわった自分の顔を覗き込んで、泣きそうだった。 「三成」 なんだ、と返事をしようとして喉の奥から血が溢れる。げほげほとむせ返る。喋らないで、といって女が口元に手をあててくる。 「喋らないで、じゃなきゃ、本当に――」 死んじゃうから、そういって必死に自分の口元を押さえる女の声は悲痛だった。 「▽、案ずるな、私は死なん」 心の中でそう答えて、女の手に自分の手も添えて、目を瞑ると、静かな昼下がりのように穏やかな眠気に襲われた。 しばらくして、きちんと傷の癒えた頃に女のところへ行った。濡れたような、海のような潤んだ瞳で抱きつかれて、これはやはり海ではないかと小さく思った。 セカンド |