溶け込むような水に浸って、暫く太陽は見なかった。眼の奥だけが枯れている。星にすらなれない。血も涙も絶えることなく流れるのに、舌の先だけは渇く。そうして舌を呑んで、肉を食って、裂けた皮から罪が流れ出る。刑罰だと思っていた。 「もう、目がみえないのか」 目を失った。左も右もなくなった。三遍目の戦だった。川の流れだけが聞こえて、傷が膿んだことさえ知らなかった。 「私は知らなかったのだ」 気のつく暇もなかった。ただ張り裂けるような声を聞いて、あ、と思ったらもう見えなかった。 「▽、▽はどこだ」 流れるように目蓋をあけて、畳に爪をたてた。枯れた声を聞いて、ああ貴様も手負いかと思った。 「どうしたの、三成」 「▽、私の手を握れ」 「うん」 唇のような感覚に目を閉じる。爪の先が傷に沈む。救われるのか、とだけひたひたと思う。 「私は目がなくなった」 「うん、三成はなくした」 「もう見えん、聞く以外できなくなった」 「そう、三成はみえなくなった」 「私はみえなくなった」 「そうだよ」 彼女の香りを嗅いで、そうかほんとうに目がみえないのだと知った。ただただ懇願が口を狂わせる。ああ。 「ああ、みえなくなってしまった……!」 「三成」 「やめろ▽、私を置いていくな!」 「いかない、いかないよ」 「恐ろしい、手を離すな……」 「うん、大丈夫、離さない」 「約束でも、命令でも、なんでもいい」 「うん」 川の流れを聞いて、はじめて眼がないことを知った。きっと傷は消えない。恐怖で喉が引き攣る。彼女に救われたい、抱き締められたい。 「私を愛せ、愛してくれ」 「……だいじょうぶ」 流れるように日が落ちて、夕暮れの口づけを受けた。 愛してくれよ、愛されてくれよ |