どうでもいい筈だった。 「▽さん」 彼女が死のうが死ぬまいが、自分には微塵も関係はなかった。 「▽さん」 病室の横に緩く花を生ける。彼女の横顔は、白熱電球の人工的な光で、浮き上がって見える。自分は椅子に腰を下ろして、彼女の顔のそばにプレゼントを置いた。誕生日だった。 「ただ、あなたは私にとって、先輩というだけでした」 それだけの関係で、今日まで過ごして、今日、彼女が死んだと聞いて、それで初めて、プレゼントを買った。初めて誕生日を祝ってやる前に、彼女は死んだ。自分だけ遺して、死んだ。連れていけばよかった。 「いま、丁度いま、気づいたのです」 涙の流れる頬は痒くて、舌の先は塩辛い。ほんとうに、ひどいひとだった。 薔薇色の恋人 |