佐助が荷物の担ぐのを、淡々とした顔で見守っていた。 「じゃあ、俺様もういくよ」 帽子の隙間から琥珀の髪を垂らして、きっちり両足揃えて、佐助はもう軍人のつもりでいる。 「御国のためにさ、戦争してくるよ」 佐助はもう泣きそうな顔をして、帽子をかぶり直した。自分は何も云わなかった。隣の軍人は、もう、ほろほろと泣いている。 「ね、俺様、死ぬかも知んないよ」 「だけど、死んでも、御国のためだから」 「うん、けど、また会いに来るから」 会いに来るからと、念を押すように云った。 「俺様さ、帰ってきたらさ」 もし、と仮定の話をして、佐助は泣き出した。 「俺様、▽と、結婚するよ」 絶対だから、と断言する。涙で軍服を濡らして、もう血が染み込んだように色が変わる。約束して、と手を握られて、どうしてか、佐助は死にそうな気がした。 「――もし、帰ってきたら、約束だからね」 ありがと、と佐助が笑いながら薄い唇を寄せる。自分は肩を押して、列車に押し込む。静かに死を促す。佐助は気がつかなかった。 「▽、だいすき」 列車ががたりと音を鳴らす。佐助が硝子越しに泣く。骨ばった薄い手を帽子の前に持ってきて、敬礼をする。この一夏で、佐助の命は朽ちる気がする。 センチメートルライフ |