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いつか、死ぬ間際に、きっと忍びに看取ってほしい。黒い髪。日輪。どちらも独占してしまいたい。墓石のように静まり返った中で、紅葉のように燃えてゆきたい。

「我は、そなたの胎内で消えゆきたい」

土に還るより、火の中に放り込まれるより、忍びの胎内で、溺れ死んでしまいたい。山が暗くなる。直に戦が来る。自分は死なぬ。きっと、億劫の魂を食い荒らしてゆく。

「それでも、そなたは我を看取れるか、▽」

知らぬうちに涙が流れた。痣のように染みてゆく。自分の犯した罪の数。きっと、呼吸をすることも許されない。

「…元就」

忍びの掌が、心臓の真上に乗せられて、そうして、美しく横たわった。自分も緩やかに目蓋を下ろす。生きている、と呟く忍びに、そうだ、と答えた。忍びも、自分も、生きている。億劫の時が残っている。草のように、水さえあれば何度も生き返る。

「私は、草だよ、元就」
「…我は、日輪の申し子ぞ」
「そうだね、だから、死なないよ」

水さえあれば、それでいい。花を咲かす必要もない。ただ、愚かに、忍びと眠っていたい。自分にも、忍びにも、それだけあればいい。





羊水
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