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今日で丁度半年になる。元就は春から学校へは行っていない。否、行けない。靴に足を滑り込ませて、鞄を肩にかけて、指を、ドアノブに伸ばす直前で、震える。下唇を緩く噛んで、短い爪で掌から血水を滴らせてでさえ、行こうとする。だから、止める。どこまでも果てしなく強い。そして果てしなく弱い。軋んだ心臓を押さえ込んで、嗚咽を漏らしながら縋り付いてくる。それで毎度、存外広い背中を撫ぜてやると、元就はこれで落ち着く。内に秘めた怒りと悲しみとを、元就は一人で背負って生きている。

「▽、今日も、我は成すことが出来なかった」

部屋に戻ると毎度そう言う。元就の自尊心が、今の行為を許していない。変わる必要などどこにもないのに。元就はただ、頑張りすぎて疲れただけなのだ。疲れたならば、休んでいいのだ。手を握れば首を振る。そうして、言う。

「▽、死にたいのならば、早に、死ねばよい、などと、見捨てるな」

見捨てるな、と元就が続ける。元就が一番に恐怖しているのは、私に飽きられて、いつか捨てられること。この先何年続くか分からない、このやり取りに、私が飽きること。そんなことはないというのに。元就は、本気で恐怖している。

「▽、▽」

するりと真白い腕が回される。背中を撫ぜてやると、ほうと、安泰したように、息を吐く。ただ何も言わないで抱き締めてやる。途端、ぽたりと音がして、肩が少し冷たくなった。





ララバイ
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