暑い。蝉が叫ぶように鳴いている。クーラーもあるにはある。だがこの気温ではあまり意味をなさない。それよりも電気代が心配だ。自分は主婦か、と小さく思う。 「あっついね」 「ああ、異常気象だな」 「大丈夫か家康」 「だめワシもうだめ」 だらりと筋肉質な腕が垂れる。団扇で扇ぐのも飽きたらしい。代わりに自分が扇いでやっても疲れるだけだ。ので、やめた。額を伝う汗が不愉快だ。水になりたい。 「なあ▽、アイス食わんか」 「あったっけ」 「いや、コンビニいかんとない」 「え、買ってきてくれるんですか」 「え、ワシが買いに行くんですか」 互いに顔を見合わせる。結局どちらも買いに行く気はないらしい。動くのも億劫だ。これ以上不快な思いをしたくない。 「じゃ、かき氷つくるか」 「ワシが?」 「いや、二人で」 「いちご味しかないぞ」 「え、ブルーハワイないの」 「ない」 「うん、じゃあいちごにしよう」 べたついた皮膚の感覚とともに立ち上がる。あついね、とかき氷機を取り出す。あついな、と家康がいちご味のシロップを出してきた。ほんとうはブルーハワイが食いたかった。いちご味のかき氷は女の子のものだ。だけども家康の好物だから、しかたない。 「あ、▽」 「どした」 「氷足りない」 「え、まじで」 「まじだ、どうする」 「一つを二人で食べればいいんじゃない」 「え、いいのか」 「いいよ」 いいよ、というのに、え、え、と家康は顔を赤くする。この男は、初心だ。ベランダの向日葵が恥ずかしそうに首をもたげる。 「え、いいのか、▽」 「いいよ、うん」 「か、かか、間接キス、とか」 「え、そんなこと考えてたんすか」 「あ、いや、その、うん、そうです」 顔から蒸気を出して家康は座り込んだ。どうせならスプーンもひとつにするか。提案したら絶叫された。蝉みたいだ。おかげで隣のおばさんに注意された。リア充め。なんでそんな単語知ってるんですか。 ショッキングピンク脳内 |