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この間のニュースで知った。あと三日で地球が滅ぶらしい。隕石とかなんとか、色々言っていたが忘れた。アナウンサーも父も母も友も、皆一様に絶望したような気が狂ったかのような目をしていた。父は急いで荷造りを始めた。母は食べ物をありったけ買い込んできた。友は泣きながら抱き合っていた。私はただゲームを弄りながら、なんだ、とだけ思っていた。そうこうしているうちに一日過ぎた。ニュースで知ったが、どうも成すすべはないらしい。どうしても死んでしまうらしい。そうして、ショックか何かは知らないが、飼っていた猫が死んだ。そして今は二日目の夜である。何がどうしてこうなったか全くもって見当がつかないが、私はどうやら三成に抱き締められているらしい。貴様の顔が見たいと突然の呼び出しをくらって慌てて三成の家へ駆け込んだまでは良かった。そこからどうしてか、玄関を開けた途端苦しいほどに抱き締められた。思わず吐き出しそうになった。それから何分経ったか知らないが、かなりの時間抱きしめられていたようで、じんじんと足が痛んできた。試しに肩を叩いてみる。

「三成、ねえ、苦しいよ」
「……いやだ、拒否は認めん」
「おまえはどこの駄々っ子だ」
「駄々っ子で構わん」
「けど、ほんとに、苦しいんだもん」
「……だが、今、ここで離してしまっては、」

貴様が居なくなってしまう、と嗚咽にも似た縋り付くような声色で言われた。さらに腕の力が強まる。背骨が肋骨が内臓が、圧迫されて、ぎしぎしという。苦しい。けど、離されたく、ない。

「……▽」
「……ん、なに」
「あと一日、私と過ごせ、私にキスをしろ、私を抱き締めろ、私も貴様にそうしてやる、貴様の好きなものならこの二日のうちに揃えた、菓子もある、漫画も、服も、ゲームも、なんでも、あと残りの二十四時間を、私と貴様だけの空間にしろ」

頼む、頼む、としきりに言う。普段なら全くと言っていい程話さないくせに、吐き出すように言われた。おまけにぼろぼろと泣き出した。御陰で服が皺だらけになった。お気に入りの服だった。だけども嬉しかった。嬉しくって、それで、私は、泣いた。それに三成が気づいて、すこし嬉しそうにしてから、とりあえず一回目のキスをしてきた。あと何回キスが出来るんだろう。地球が滅びてよかった、なんて、少しでも思った私はいけないのだろうか。




駄々っ子
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