たどり着いた部屋から臭ったのは血だった。いつもの香のとは違った。鼻の奥が痛む。震え出した舌の先を緩く噛んで、傍に控えた兵が悔しそうに涙の流すのをみていた。 「▽様ッ」 吐き出すように紡いだ吐息に躰が跳ねる。びくついた瞬間に締め付けられたのか、包帯の端からとろりと血が滲む。あ、と思って、咄嗟に、やわく押さえ込んだ。 「あ、▽様っ……」 「このこえ、三成、か」 渇いた眼が虚ろに動く。自分を探す。そうしてやっと捉えて、きゅうと、冷えた爪が食い込む。包帯の取れないように、傷の開かぬように、緩く、握り返した。 「すこし、気を、ぬいてしまっていた、すまない」 「貴女様の所為にはございません!全ては、私の未熟が招いた、」 「いや、前日徹夜したのが、不味かったらしい、今度、から、気を付けなくては」 「▽様……」 掠れた声で呼ばう。違う、これはこの方の所為ではない。己の力不足だ。たったそれだけで、こうなった。この方の躰に刀傷を残した。全て己の所為だった。 「▽様、どうか、どうか、私に、罰を、」 雨水が滴るように鈍い声が出た。報いなどにはきっとならない。許しを請うこともできない。死ぬ。今ここで腹を切れば、この方はまた笑まれるのか。そう思って、ただ、握られた手を離すことも叶わなかった。 「三成、おまえ、腹なんぞ切ることはないよ」 「しか、し、私は」 「なに、次から徹夜などしなければいいんだ」 それでいいんだ、と包帯の巻かれた躰を捻って自分の頭を撫ぜた手に、泣いた。 私は罰が欲しいのです |