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夕陽が怖い。教室の窓の隙間からきらりと射し込んできて、確かに綺麗なはずなのだ。だがしかしその日の色が、温かさが、時の流れを自覚させて、いつか死んでしまうという恐怖で自分の心を無慈悲にも抉っていく。恐ろしい。自分は夕陽が恐ろしくってならない。逃れようと必死に足掻いて、舌を呑んで、肉を裂いて、爪を剥がしても、それでも、この頬を染め上げんと夕陽は東から追い掛けてくる。

「私は夕陽が恐ろしい」

かちかちと歯を鳴らしたまま無様にも涙で顔を汚して彼女の制服を掴む。すうと、白い手が伸びて自分の前髪をなでつけてきた。ふるりと思わず手が震える。

「▽」
「うん」
「私は、怖い」
「うん」
「なぜだかは、分からない、怖い」
「……うん」
「、恐ろしい……!」

ぎゅうと自分でも恐ろしいくらいに強い力で掴む。制服にはしわくちゃに跡がついてしまった。ああ、自分も彼女もいつか死ぬんだと思うと、本当に恐ろしくなってしまって、思わず震える腕で掻き抱いた。

「三成」

瑞々しい唇の端から枯れたような吐息で呼ばれる。もう返事もできなくなって、ただただぎゅうと苦しいくらいに抱き締めた。途端、彼女の落ち着いた声が聞こえて、心臓の動きが少し弱まった。

「三成、私も、怖い」
「……▽」
「だから、ずっと二人でいよう、離れないようにしよう」

大丈夫、と言い聞かせるように呟いた彼女に安堵する。そうして、大丈夫、ともう一遍声に出した彼女と手を繋いで。

「▽、離れるな、ずっと私と共にいてくれ」

嗚咽に混じった約束をする。うん、としきりに呟いて自分の手を握る彼女に、淡く、接吻をした。




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