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私の世界を包み込む全てが、家康という太陽であった。家康は誰も笑わなかった。私のことも、ちっとも笑いはしなかった。私は家康が大好きだった。

「▽!▽!」

彼の張り裂けるような声を聞いて、これで耳が焼けてもいいと思った。いつも黒い目の奥に熱い涙をたくさん溜めて、ぼろぼろと死ぬなと言ってきた。もうこれで死んでしまってもいいと思った。

「▽、聞こえるか!ワシの声が」

無理に笑おうとして歪んだその顔も愛おしくって。

「いえ、や、す」

血の滲む指先で必死に掴もうとした。ああ、でもごめんね家康。もう腕が動かないの。声も出ないの。舌の先が震えるほどに痛いの。彼の縋り付くような声を一心に浴びて、そうか自分は死ぬのだなと思った。それでも彼が、自分を生かそうと必死になって叫ぶから、ついその喉が心配になってしまった。

「い、いえや、す」
「▽、すぐに、すぐに救護班が」
「も、い、いよ」

舌を必死になって動かして彼の手を振りほどくと、その大きな瞳が一層揺れて、見ていられなくなった。

「いいはずが、なかろう」

ともに太平を支えると誓ったろうと、ぼろぼろになった声で懇願するように言われた。ああ、でも、本当にごめんなさい。私は約束を守れませんでした。

「さ、よ、なら」

また逢おうなんて、そんなこと絶対に言わないから。おねがい。だから、彼がこれからも幸福に包まれていますように。この太陽を見捨てないで、おねがい、おねがいだからね、神様。




星になった雨水が唄をうたう
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