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ほとんど無意識だった。私は知らなかったのだ。爪の隙間に食い込んだ苦無で、小さな爪が剥がれ落ちたことも、ちっとも知りはしなかったのだ。ただただ音だけが耳の奥に響いて、流れ出す血水をみて、ようやく、爪の剥がれたのを知った。

「知らなかったの」

ほんとうに知らなかったのだ。剥がす気も更々なかった。無我夢中で首ばかり追いかけて、すべては無意識のうちに終わっていた。だから、お願い、そんなに悲しそうな顔をしないでよ。

「でも、俺様は許さない」
「知らなかったんだよ」
「でも、だめ、許さない」

許さない、と言って、肉の曝け出された指を大事そうに大事そうに包んで、そうしてしまいに、ぽろりと泣き出した。

「さすけ」
「だめ、だめ、ほんとうに」
「うん、ごめんね」
「ほんとに、だめ、だめ」
「うん、ごめん、ごめんね」
「だめ、許さない、よしてよ」

約束して、と嗚咽に混じった懇願が縋り付く。ごめんね、と琥珀色の髪を掻いて、そうして、流れるように眠った。



剥がれた爪に横たわる
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