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「▽様」

恐怖の声で微かに呼ばう。彼女が凍てつくような眼をして、なんだ、と喉の奥を震わせて、そうして、ただ目蓋をおろした。真白な頬が普段より青く見えて、いや違う、これは外が宵のせいだと自分に言い聞かせる。白く花が枯れる。乾いた指先が頬を撫でる。恐ろしい。

「三成」

悲鳴のような吐息に、はっとして彼女を見遣ると、血の引いた唇で確かに、三成と紡いでいた。ああ。

「▽様!」
「みつ、なり」

黒い眼が虚ろに動いて自分を探す。かさりと乾いた頬に触れて、います、私はここにいますと喉が裂けるくらいに言う。自分の手を握り返す彼女を見て、ああ、この灯火が消えてしまっては、と考えて恐ろしくなった。

「……三成」

枯れたような吐息で名を呼ばれる。怖い、怖い。この方が消えてしまう。

「▽様、どうか、どうか……!」

すっかり乾いた黒目を見て、今この場で自分の腕がもげ落ちてもいいと思った。もう二度と戦ができなくったって、いいのだと思った。それでよかった。よかったのに。

「貴女様は死んでしまった」

供えたはずの花はしおれて、どうしてか、もう、叫べない。




片目を瞑った色女
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